フォーカス 私たちの実践 病後児保育の実践 北海道・勤医協菊水こども診療所 病気の子どもを預かり 看護・保育を提供する
「子どもが熱を出したが、どうしても仕事を休めない」。そんなとき頼れるのが「病後児保育」です。北海道の勤医協菊水こども診療所では、二〇〇七年から病後児保育にとりくんでいます。第九回学術・運動交流集会で、宮地直子さん(看護師)が発表しました。
当診療所は、〇七年に札幌市で五番目となる医療機関併設型の病後児保育を開設しました。日々の診療場面で、「休むと首になってしまう」などといった保護者の悲痛な叫びを多く聞き、私たちが今できることは何かと考え、開設しました。
病後児保育とは、札幌市の「乳幼児健康支援デイサービス事業」にもとづくもので、病気の回復期にあって、まだ保育園や幼稚園に登園させられない子ども を、仕事などで保育できない保護者に代わって一時的に預かる事業で、子育てと就労の両立を支援することが目的です。市から補助金が出ています。
定員は四人で、利用時間は午前八時から午後六時まで。料金は保育料が一日三〇〇〇円(減免制度あり)で、別途給食費三〇〇円がかかります。対象は生後五カ月から小学三年生までです。
この事業では、子どもの健康状態を見守りながら、服薬の介助や給食の世話などを行います。午前と午後の二回、当診療所の医師が回診します。昼食は、隣接 する病院で調理した温かい食事を用意します。卵・牛乳のアレルギー対応食も可能です。年齢に合わせて離乳食やミルクも用意します。
保育室とは別に隔離室があり、間仕切りで二部屋にわけて使うこともできます。それぞれトイレと手洗い場がついており、子どもが隔離室から出なくてもすみ、他の子どもとの接触が避けられます。
“仕事休めない”
〇七年一一月から〇九年七月までの延べ利用数は約一五〇〇人(実利用数は約八〇〇人)で、一日の平 均は約三・二人でした。定員の都合で利用できなかった子どもは五六〇人で、キャンセル待ちは多い日で一〇人以上になることもあります。年齢別で見ると、一 歳が半数近くを占め、〇歳、二歳が続きます。疾病別では、急性上気道炎が半数以上で、次に気管支炎や肺炎、胃腸炎、喘息や喘息性気管支炎となっています。
五歳のAちゃんはアデノウイルス感染症でした。母子家庭で、母親が仕事を休めないため病後児保育を利用。母は「利用できなかったら、鍵を掛けて家に置いていくしかない」と話していました。
一歳のBちゃんは、RSウイルス感染症と診断されました。入院が必要でしたが、母親が「どうしても仕事を抜けられない」というため二時間だけ利用し、その後入院しました。
利用した保護者からは、「有休を使い切っていたので助かった」などの声がある一方で、「三日で一万円かかるのは痛い。何のために働いているのか…」という声も出ています。
想像以上の反響
開設当初、「子どもが病気でも親を働かせる気なのか?」といった声が職員から上がりました。しかし 想像以上に保護者から喜ばれ、毎日のように感謝の言葉をもらうと、病後児保育は子育て世代の親たちにとってなくてはならないものだと強く確信できました。 キャンセル待ちの多さなどから、今後さらに充実が必要と実感しています。
今後は、保育士・看護師の力量をアップし、施設の安全性を高めたいと思います。また、もっと利用しやすい事業になるように、施設増や定員増、料金値下げなどを求めて行政に働きかけていく必要があると思います。
(民医連新聞 第1483号 2010年9月6日)
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