介護保険10年 私の改善提案 〈その4〉 軽度な予防給付の判定にショック 熊本・八代中央クリニック介護支援事業所 後藤あけみ
一〇年目に入った介護保険。二〇一一年の法改正に向け、介護支援専門員(ケアマネジャー)など支援に携わる専門職から改善への提案を、シリーズで聞きます。
【事例】Aさん(74)は脳出血による片麻痺で、車イスが無く ては日常の移動は行えません。ところが、認定の更新で要介護2から、予防給付(要支援2)に軽度に判定されてしまいました。いままで通所リハビリ週二回、 デイサービスを週一回利用していたのですが、楽しみだったデイサービスが使えなくなって、意欲が低下し、閉じこもり傾向となりました。
また、要支援2になったことで福祉用具(車イス)貸与が受けられなくなり、引き続き貸与されるようにするためには新たに市役所へ医師の意見書と所定の書類を提出し、支給決定を受けなければなりませんでした。
日常の移動手段の車イスを取り上げられると、ますますADLが低下し、かえって重度になる可能性が大きいのです。
予防給付への移行で、包括支援センターとの契約や委託事業所のプラン策定などでも書類の手間が増えました。Aさんの家は老老世帯で、介護者は夫(76) 一人です。夫の負担は実際の介護だけでなく事務的な面でも増えました。
とくに夫にとって息抜き・レスパイトの一つになっていたデイサービス利用がなくなって、夫の不満はさらに大きくなりました。
状態が変わらないのに、介護度だけが軽く変わったことに家族は戸惑い、不満をもちました。「リハビリを一生懸命やらない方がいいのではないかとさえ思った」と精神的なショックを隠せません。
「介護の負担はほとんど変わらないのにどうしてこんな認定結果になるのか」と認定調査に対しても不信感をもっていました。
私たちも更新前と状態はほとんど変わっておらず、ADLも意見書も前回と同じであったので、想定外のできごとでした。
本人、家族の希望で、主治医とも相談し、すぐに変更申請を行いました。その結果、要支援2から要介護1になったことでなんとかデイサービスを再開することができました。
問題が多い要介護認定認定制度は大きな疑問があります。認定調査そのものが必要かどうかという意見もあり、抜本的な検討が必要と思います。最後に八代市は要介護の認定者が多いと県から指導を受けていたことも影響しているのではないかと考えています。 |
(民医連新聞 第1483号 2010年9月6日)