相談室日誌 連載312 国保料の滞納を理由に… 吉田 晶子 (富山協立病院)
私とAさん(57)との出会いは、「肝性胸水があり入院をすすめているが、医療費のことでためらっている」という相談からでした。AさんはC型肝炎から 肝硬変になり通院中で、最近は働けない(日雇いの溶接業)状態でした。国保に加入中でしたが、保険料は払えず未納分も高額でした。娘さんに保険料を分割で 支払ってもらい、二カ月の短期証で診察を受けていました。
Aさんは、娘さんと孫二人の四人暮らし。娘さんは離婚し、保育園へ通う子ども二人を抱え、パートで働いており、わずかな収入と児童手当で生活していま す。Aさんは、直前にソケイヘルニアの手術を別の病院で受けていて、娘さんにその医療費も含め、生活費や保険料の負担をかけていることで、今回の医療費を とても心配していました。「どのくらいの入院になるか? いくらかかるか?」と。Aさんは市役所から、国保料の滞納があることを理由に限度額認定証(非課 税世帯の場合、一カ月の医療費支払いが限度額ですむ)は出せない、高額療養費で申請した分は保険料の滞納に回すように言われていました。
そこで、肝硬変の治療であれば、富山県単独の特定疾患の医療費一部助成制度を使えることや、市役所に委任払い制度を受けられるよう交渉することを提案し ました。Aさんは、その後の外来治療で、肝臓の症状が少し改善してきたこともあり、入院しないでようすをみることになりました。しかし、ソケイヘルニアが 反対側にも発症し、手術が必要な状況になりました。
急いでAさんと娘さんと面談しました。年金も出ず、働けず、生活も厳しい状況です。Aさんは、家族の食事の用意ぐらいは自分がやろうとがんばっていまし たが、いろいろと相談した結果、娘さん親子は近くの祖母の家へ移り、Aさんは一人暮らしになり、生活保護を受けることにしました。娘さんはAさんのようす を見に行くことができます。
富山市国保については、短期証の有効期間が短いこと、限度額認定証の制限、自己負担の減免がないことなど問題があります。改善を求めていかなければ、患 者さんは安心して医療を受けることができないと今回あらためて強く感じました。
(民医連新聞 第1483号 2010年9月6日)
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