新綱領の実践にふみ出そう 第一回評議員会を前に 長瀬事務局長に聞く
全日本民医連は八月二一~二二日、第三九期第一回評議員会を開きます。そこで議論されるポイントについて、長瀬文雄事務局長に聞きました。
◆総会後、半年の成果を持ち寄り
今評議員会は、五〇年ぶりに綱領を改定し、新しい方針を採択した第三九回総会から半年の節目に開かれます。
新綱領は私たち自身が、つくった当事者として日々の活動のなかで座標軸にしていくものです。また、新綱領は憲法九条と二五条が輝く医療と福祉をめざすこ とを内外に宣言しました。いま、総会方針の学習運動が終わり、新綱領の学習運動が続けられていますが、評議員会では、その成果や受け止め、実践の内容や今 後の課題を議論します。
また、綱領を日々の活動にどう生かしているか立ち返る機会の一つとして、来春、実践交流会を行う提案をしています。
◆反貧困、反公害など活動に確信
総会後、全国で多彩な活動が行われています。その一つが「反貧困」の運動に呼応した医療・福祉の充実を求めるとりくみです。
宮城民医連では、路上生活者の健康診断にとりくみ、血液や尿検査、歯科検診を実施しました。その結果をもって、行政に対策を求めています。
第三八回総会以来、各地の民医連事業所が無料低額診療事業に挑戦しています。「病院経営が大変なときに…」という声もある中、訪問活動で国保料滞納の実 態を目の当たりにし、事業の必要性を痛感して開始したところ、受診者が増え、経営も改善した例がほとんどです。
昨年九月の大検診以来、水俣病検診が各地で行われています。アスベスト被害やカネミ油症など、公害問題にも積極的にとりくんでいます。大阪から始まった 熱中症調査も各地で行われ、猛暑の今夏、行政に対策を申し入れています。こうした活動によって、職員自身が民医連運動への確信を強めています。
新たな課題としては、米軍基地の騒音が健康におよぼす影響の全国調査です。石川民医連が自衛隊小松基地で先駆的に実施していることを受け、沖縄をはじめ 全国に広げ、基地被害の一つとして明らかにしたいと考えています。厚労省が募集した医療の質の評価のとりくみも、独自の工夫もして新たに提案します。
これらの課題は「病気は個人の責任」という新自由主義的な考えと対抗し、「生活と労働の場から病気をみる」という民医連の本領を発揮することです。民医 連だからこそ、正面から実態に迫ることができると思います。病気の社会的背景に対する「目と構え」は、綱領と総会方針が提起しているものです。
◆克服すべき課題と教訓
総会では、克服すべき課題として、(1)医師、医学生対策での抜本的前進、(2)経営改善と経営管理の強化、(3)医師、看護師、事務など幹部育成を意識的にすすめること、(4)自覚的な民医連運動(全国、地協、県連)への結集と強化、の四点を挙げました。
医師の確保では今年、〇二年を上回る一年生の奨学生が生まれました。初期研修を終えた奨学生が後期研修を民医連で続ける割合は八割になりました。
その教訓は、奨学生を「お客様」にせず、高齢者生活実態調査などの実践を通じて民医連の活動を知らせ、地域医療の担い手としての成長を促してきたことで す。しかし、卒年、中低学年での目標からみれば遅れており、対策を強めなければなりません。
看護師も昨年、一昨年より新卒受け入れが増え、退職者が減りました。評議員会ではこうした前進の教訓を明らかにし、全国に広げたいと思います。
経営問題では、〇九年度は八割以上の法人が黒字でした。患者数や健診数、介護事業の利用者数を増やす努力をしての収益増です。費用減だけでなく医療活動の充実による黒字は重要です。
しかし、診療報酬は依然として上がらず、先の見通しは厳しいのが現状です(図)。経営問題と医療活動を結びつけて分析し、教訓化したいと思います。
幹部育成の課題では一昨年、事務職員の派遣、委託業務の問題を提起し、その後、常勤職員化などの改善を図ったり、事務政策を作成した県連・法人の教訓が出ています。
県連機能強化のために、九月下旬、県連事務局長の研修合宿を行う計画です。
公的医療費のアップ、社会保障の拡充では、医師会も含め多くの医療・福祉団体が一致できます。しかし、国の新成長戦略への評価や財源問題などでは一致し ないこともあります。政治をもっとも困難な立場にある人の目で見て、住民の要求と運動の力で政治を変えていく運動が重要です。今年は朝日訴訟一審勝利判 決、沢内村で全国初の老人医療無料化が実現して五〇年目に当たります。
民医連の「医療・介護再生プラン案」を専門家や研究者といっしょにバージョンアップし、地域で共同を広げていきたいと思います。
(民医連新聞 第1482号 2010年8月16日)