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民医連新聞

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独居高齢者老老世帯 熱中症にご用心 訪問調査7年目 大阪民医連 高齢者に “安全な住まいと見守りを”

 異常な猛暑が続く今夏、熱中症による死者が二〇〇人を超えました。大阪民医連が実施している「熱中症調査」は今年で七回目。気になる高齢者を訪問し、注意を促しながら住環境の問題などを調べ、緊急対策を行政に申し入れています。(小林裕子記者)

 大阪民医連は今年も「地域から熱中症による死者を出さないための調査」を七月二六日から八月八日に実施。対象は六五歳以上の独居、老老世帯などです。全事業所に呼びかけ、五〇〇軒ほどを訪問して調査します。
 七月二九日、大阪市にある此花(このはな)診療所の訪問に同行しました。二週間ぶりに小雨が降り、外気温は二八・五度。比較的しのぎやすい日です。坂倉 智恵子看護師長、竹本めぐみ事務長、出口圭介さん(事務)、西尾祐輔さん(介護福祉士)が訪問しました。

「暑くて眠れない」

 まず小川アイさん(仮名=六九)宅を訪問。一人暮らしで生活保護受給です。要介護1で同診療所のデ イサービスを週二回利用しています。細い路地の奥にある古いアパートは廊下を挟んで六畳の部屋が五つ並び、その一室が住まいです。簡易ベッドや服、日用品 に囲まれて、アイさんはテレビを見ていました。
 「体調はどうですか? 暑くてかなわんね」と声をかける坂倉師長。クーラーはなく、扇風機が回っていました。汗をぬぐいながら「暑くて眠れない」とアイ さん。保冷枕を使っていますが、冷蔵庫はドアが壊れ、ガムテープで留めてあり不調のようす。正面の窓際が台所で、炊事をすると熱が部屋にこもります。「食 事は日に一回だけ。暑いからでなく普段から」と聞き、水分補給や換気について説明し、緊急通報電話を確認する坂倉さん。「台所が別の二間のアパートに引っ 越したい」とアイさん。室内の気温は三二度でした。

外より暑い室内

 続いて山村和雄さん(仮名=七九)の家へ。急な階段を上った倉庫の二階にある一室の六畳が住まいで す。一人暮らしで生活保護。クーラーはなく、窓は小さく台所も風呂もありません。「夜は扇風機をかけっ放しで寝ている」と言います。驚いたことに、天井か らベニヤ板が垂れ下がり、裸電球に照らされていました。長雨のあと急に落ちてきて、修理を待っているとの話でした。「暑い日の昼間はどうしているの?」と 聞くと「淀川土手に涼みに行ったり…」と苦労しているようです。
 体調などを確認しながら、坂倉さんは「何かあったら何時でもいいから緊急電話してね」。「困ってることはない?」と竹本事務長。介護予防の話などをするうち、室温計は三二度になっていました。
 新築マンションが立ち並ぶ奥にある築四〇年とも見える古いアパート。「クーラーがない」という以前に、高齢者の住まいとしては不適切としか思えません。 山村さん宅の家賃は一万二〇〇〇円、大阪府の住宅扶助基準は四万二〇〇〇円です。快適で安全な住宅は確保できないのでしょうか?

気になったらすぐ訪問

 此花診療所では、二カ月前に患者が孤独死するという事件があり、職員はショックを受けました。その後、気になったらすぐ訪問することにしています。
 今回の「熱中症調査」でも、気になる対象者十数人をあげて訪問し、「クーラーがない」「あっても壊れている」「操作ができない」「使う習慣がない」などの実態がわかりました。
 竹本事務長は「背景に経済的な事情と認知症など高齢者特有の問題がある」と指摘します。「行って分かることが多い。本人は『大丈夫』と言うけれど、炊飯 器の中を見たらご飯がひからび、冷蔵庫はジュース一本だけ。急いでケアマネに連絡したことも…」。

みんなで勉強して動く

 就職して一年目の出口さんも言います。「外来では問題なく見えても、訪問して気づくことがある。そ れを職員みんなで出し合い、勉強したり支援につなげる」。これが同診の魅力だそうです。最近も患者宅に「電話をつけよう」と、話し合い、電話設置補助制度 などを調べ、実現しました。
 「これからの事業や活動のカギは『住』やね」「銭湯も廃業してるから風呂なしの家では…」「それと認知症ね」など話し合う職員たち。熱中症調査は「地域を深く知るよい機会」でもありました。

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 大阪民医連は七月二九日に大阪府へ、全日本民医連と全生連は八月六日に厚労省へ、熱中症の緊急対策を申し入れました。危険度の高い高齢者の訪問、見守り、緊急避難場所の確保などが柱です。

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(民医連新聞 第1482号 2010年8月16日)