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民医連新聞

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“後期高齢者医療制度廃止”“国保改善”求める署名と運動を 参院選後の情勢と秋のたたかい

 参院選が終わり、国会の勢力が変わりました。選挙結果をどう見て、秋に向けて、どう運動していくのか。全日本民医連の吉田万三副会長に聞きました。(聞き手・丸山聡子記者)

吉田万三副会長に聞く

 鳩山政権は「後期高齢者医療制度の即時廃止」や「普天間基地の県外移転」という公約をひるがえし、迷走して国民の反発を招きました。その後の菅内閣も、「消費税増税」発言を機に急激に支持を失いました。
 選挙では、急進構造改革派の「みんなの党」が議席を伸ばした以外は、誰も勝たなかった選挙と言われています。国民がこれからの国の方向を模索している現れと見ることができます。

基地・安保問題と消費税

 普天間基地の問題では、以前は「日本に米軍基地があるのは当然」という意見も強かったのが、沖縄や 移設先候補地とされた徳之島の運動で、「米軍の抑止力って本当?」「戦後六五年もたつのに、基地が日本中にあっていいのか」「安保は必要なのか?」という 議論が広がりました。民医連などが主張してきた「基地の無条件撤去」の要求は、一歩、二歩と前進しつつあります。
 消費税問題では、マスコミなどの影響もあり、「社会保障が良くなるなら多少の負担増はやむを得ない」「財源はあるのか」など、単なる反対にとどまらない 有権者の反応も特徴的でした。選挙結果は、消費税率アップを打ち出した民主党、自民党に「増税NO」を突きつけました。

菅内閣と国民の矛盾

 菅内閣は「コンクリートから人へ」という当初のスローガンを投げ捨て、再び新自由主義(構造改革)路線をおしすすめる政策に戻りました。民主党は、発足時の一九九八年に回帰したのです。「日米合意の堅持」や「消費税増税」の明言はその結果です。
 これは、財界の動きとリンクしています。「消費税増税と法人税の引き下げ」をセットで打ち出した菅内閣の「新成長戦略」は、日本経団連が四月に発表した 「成長戦略2010」と一致しています。ここには、社会保障・医療の分野に企業が参入し、儲けの場にしようという方向も明確に打ち出されています。

秋のたたかいは民医連の出番

 国会内の勢力の変化の中で、秋の臨時国会が始まります。私たちは引き続き、「普天間基地の無条件撤去」「社会保障費を増やし、後期高齢者医療制度の即時廃止」の旗を降ろさず、がんばりたいと思います。
 その際、これまで民医連が、病院にかかりたくてもかかれない、必要な介護も受けられない実態を事例から明らかにし、国会や世論に訴えてきた経験を重視 し、発展させます。国民生活の行き詰まりを放置したまま、大企業優先の戦略を具体化すれば、菅内閣は国民との矛盾を深めるでしょう。
 一〇月二一日には、「社会保障費増やせ」「医療費の窓口負担を減らせ」「医師・看護師を増やせ」のスローガンを掲げ、医団連主催で集会を開きます。
 政府は、後期高齢者医療制度を、廃止ではなく改変しようとしています。医療費抑制の方針はそのままにし、「広域化」や「地方分権」を口実に、国が保障す べきナショナル・ミニマムを放り投げ、国民生活を守る役割を地方に押しつけるものです。この危険性を知らせる学習運動を、スピード感をもって広範に広げて いくことが重要です。
 消費税増税をめぐる論議も本格化してきます。数かずの大企業優遇策を具体的に暴露し、「消費税増税の不平等さ」を明らかにし、医療・福祉のための財源確保の道を提言します。
 日米安保についての議論も起こしていきましょう。今回の選挙で、沖縄では伊集唯行医師(沖縄医療生協理事長)が立候補し、奮闘しました。「米軍基地の無 条件撤去」を明確に掲げた候補が五万票を超える票を得たのは画期的だと思います。
 「いのちの平等」を掲げる民医連のがんばりどきです。「医療・介護再生プラン(案)」の内容を豊かにし、「安心して暮らせる社会をつくるため」の積極的 な提案が必要だと考えています。各地で平和アクションプランの策定がすすんでいますし、一〇月からは共同組織拡大月間も始まります。後期高齢者医療制度の 即時廃止や国保の改善、消費税増税反対の新しい署名も始まります。
 民医連の強みは、現場の実態を明らかにし、現場を担う者として、医療でも介護でも具体的な改善要求を提起していける点です。この立場で、積極的に提案もし、運動を広げていきましょう。

“新”高齢者医療制度の危険性

 厚生労働省は「後期高齢者医療制度廃止後の新たな制度の具体的な検討を行う」として、「高齢者医療制度改革会議」を八回にわたって開催しています。先日、「中間まとめ」案が提案されました。(図1
 基本的な考え方では、「健康保険の一元化」「地域保険の創設」の第一段階として、「高齢者のための新たな制度」を構築するとしています。国民健康保険法 が「改正」され、都道府県が市町村国保の広域化を推進する「広域化等支援方針」の策定ができることになりました。市町村で運営されている国民健康保険を、 できるところから都道府県単位にしていくものです。
 「改革会議」では国保の改革と関連して、高齢者が加入する制度を検討しています。国保と協会けんぽを「地域保険」に統合し、都道府県単位の広域連合が運営する「地域保険」構想も出されています。
 広域連合による運営を採用している後期高齢者医療制度では、「加入者の意見が届かない」「短期保険証発行や保険料の設定など加入者の実情を踏まえない機 械的な対応」などの問題が起きています。背景にある「医療費抑制政策」をやめさせ、保険料負担・窓口負担などについて、「社会保障の姿に戻す」視点で批 判・検討を加え、提案と運動をすすめることが必要です。

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「福祉と平和」の対案づくりが必要

 国民大運動実行委員会は七月一五日、東京で学習交流集会を開き、約二五〇人が参加しました。
 渡辺治さん(一橋大学名誉教授)が「参院選挙後の情勢と構造改悪をめぐって」と題して講演。「民主党の得票率が減ったが、自民党の得票率が回復したわけでない」とのべ、「二大政党離れ」を指摘しました。
 一方、日米安保や消費税の税率アップに反対した共産党や社民党が得票を減らしたことについて、国民が日米同盟や消費税増税について疑問を持ちつつも、 「日米同盟を解消して日本の安全は守れるか」「消費税を増税しないで財政は破綻しないか」と確信がもてず、「非現実的と思っている状態」と説明しました。
 新しい政治へ道を開く課題として「福祉と平和の対案づくり」を提案し、ナショナルミニマムを確立し、雇用と社会保障の総合的政策、ささえる財源、日米同 盟に対抗する東アジア平和構想などの柱を示しました。「政党+運動団体+専門家+学者」で練り上げていこうと呼びかけました。

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(民医連新聞 第1481号 2010年8月2日)