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民医連新聞

民医連新聞

水俣病 各地で検診 未救済の患者へ呼びかけ

 熊本「ノーモア・ミナマタ訴訟」の和解協議がすすみ、「水俣病被害者救済特別措置法」による申請が始まり、新潟水俣病の訴訟でも地裁から和解勧告が出されました。未救済患者と追加訴訟希望者の掘り起こしが急務です。各地協などが検診に力を入れています。

北海道 初の検診

 七月四日、勤医協西区病院を会場に実施し、八人が受診、全員が水俣病と診断されました。今後、補償を求める訴訟や保健手帳の申請などを行う予定です。
 札幌近郊に住むAさんは、一八歳まで不知火海の沿岸で育ちました。買ったり獲ったりした魚や貝を、ほぼ毎日食べていました。
 症状を感じたのは一五年ほど前。通勤途中に足に力が入らず、車のアクセルを踏むときに異常を感じて以来、痛みやこむら返りが頻繁に起きました。整形外科 に通院し痛みだけは和らぎましたが原因は不明。治療費が年金生活の身に重くなっています。Aさんの母は三〇年ほど前に水俣病で死亡。熊本に住む兄弟も水俣 病の保健手帳を持ちます。兄から水俣病の検査に帰るよう言われ、体力や旅費で迷っていた時、新聞で北海道でも検診ができることを知りました。
 北海道では初の検診です。検診団長の塩川哲男医師は「道内には苦しみや不安を抱える被害者がまだいると思います。一人でも多く救済されるよう民医連とし ても活動していきたい」と語りました。検診には水俣から協立クリニックの高岡滋院長と池田龍己事務長が支援に来ました。
(「北海道民医連新聞」から)

宮城 弁護団も支援

 七月六日、坂総合クリニックを会場に「水俣病東北相談会」を実施しました。医師三人をはじめ職員一一人がとりくみ、東京から「ノーモア・ミナマタ東京原告団」の弁護士二人が支援にきました。
 受診者は三人で、紹介や地元紙で知って来ました。仙台市内から来た親子は、すでに保健手帳を交付されており、四肢末梢神経障害など典型的な水俣病の症状 があり、気仙沼から来た別の女性も特有の症状があり、三人とも水俣病と診断されました。
 弁護士と相談し、提訴することになった三人は「弟や知人にも紹介したい」「こんなにていねいに診てもらったのは初めて」など、話していました。
 患者を掘り起こし、救済につなぐことが期待できる検診でした。
(萩原修、県連事務局)

新潟 患者会と協力して

 新潟水俣病の公式発表から四五年。救済を求める被害者は現在五〇〇人を超えます。熊本の和解協議の進行に伴い、新潟でも同様の協議が予測されます。
 新潟水俣病阿賀野患者会(一五六人)と新潟民医連は実行委員会をつくり、六月二六日に「第一回新潟水俣病住民検診」を実施しました。検診会場は下越(か えつ)病院で二二人が受診。阿賀野川上流の地域から一時間もかけて来た人もいました。高齢者や車椅子、杖歩行、介護者つきの人も多く、県や市町村の広報や 新聞を見ての受診が目立ちました。
 県連理事会決定のもと、医師委員会、看護委員会の要請に応え、当日は医師九人、看護師などスタッフ四二人が参加。水俣病に詳しい沼垂(ぬったり)診療所 の関川智子所長、下越病院の五十嵐修院長から「神経所見の取り方」の事前レクチャーや「聞き取り調査票」の記入法を学んで検診に臨みました。当日、受診者 に一対一でサポーターが付き添い、不安を和らげました。
 当日に検診が終了した一九人全員が水俣病と診断され、患者会役員や弁護団から説明を受け、三人が裁判に加わる手続きをしました。
 一九人の「調査票」では「受診が遅れた理由」に一二人が「周りの偏見や差別」を挙げています。まだ声をあげられない潜在患者が多数いると推測されます。 その後、検診希望者は五五人に増えました。実行委員会では、検診を七、八月にも実施することを決め、引き続き国や行政に「流域住民の健康調査」を要請して いきます。
 七月八日、新潟地裁は、患者会が昭和電工と国を相手に起こした「ノーモア・ミナマタ新潟全被害者救済訴訟(原告一二五人)」で和解を勧告しました。同 日、一回目の和解協議が開かれ、次回の和解協議は九月で、一〇月をめどに和解の基本合意をめざします。いま未救済の患者に受診と裁判の原告に加わるよう呼 びかけを強めています。さらに県連では「裁判の陳述書の元になる聞き取り調査」訪問を、職員研修にも位置づけて実施中です。
(酢山省三、県連事務局)

(民医連新聞 第1481号 2010年8月2日)