こんなのアリ?! 川崎市 国保滞納者に超短期受療証
神奈川県川崎市が、国民健康保険の保険料を滞納した人に、短期保険証でも資格証明書でもない「国保受療証」を発行しており、問題 になっています。有効期限が一日、六日など短く、治療が続けられません。重症化する患者も出ており、川崎医療生協などが発行中止を求めています。(木下直 子記者『いつでも元気』)
「国保受療証」とは川崎市独自のもの。これを持って、協同ふじさきクリニック(川崎医療生協)を受診する患者が今年に入ってから増え、半年で一九人もいました。窓口負担は三割ですが、有効期限が非常に短くされています。
手遅れを生む
お腹がパンパンに腫れ、受療証で受診した女性は、即入院になりました。アルバイトしか仕事がなく、国保料を滞納していました。苦しい症状を一カ月半もが まんし、耐えきれず国保窓口へ。「保険料を払わないと保険証は出せない」という担当者にくいさがり、手にしたのが一八日間の「受療証」。医療費の三割が払 えないので迷いましたが、近所の人のすすめで、同クリニックを受診。複数のがんで手遅れ寸前でした。
また、胸部痛を訴え受診した男性は、市役所では「滞納分のうち二万円払えば保険証を渡す」と言われたのに、支所では「二万五〇〇〇円以上払わないと出せない」と言われ、一五日間の受療証が出されました。
誤った収納対策
同市では、以前は少額でも保険料を納めれば短期証が発行されていました。
なぜ変わったか? 市社保協の田中国雄事務局長は「川崎市が強化すると言っている徴収対策と連動している」と見ています。六月二八日に市社保協がおこ なった対市交渉では、市は受療証の発行数を把握しておらず、運用規定もないことがわかりました。有効期限も担当職員まかせでした。
「『滞納の制裁ではない』と市は説明するが、保険料を分納中の人や、短期証の期限が切れた人にも受療証が出されている。病気など『特別な事情の人には、資格書ではなく、短期証を発行する』という厚労省事務連絡(平成二一年一月二〇日付)にも反する」と田中さん。
治療中断を生む
この間、受療証の人たちの相談に乗ってきた川崎医療生協SW・菅野明さんは、こう指摘します。
「継続的な治療が必要な人は、期限が切れるたび、役所に出向き、同証の発行を頼まねばなりません。保険料を滞納する人の経済事情を考えると、行くたびに 支払いを催促されれば役所の敷居が高くなるのはあたり前。受療証で診療所に来た患者さんの三割がすでに治療中断になっています。国保料の滞納対策といいな がら、払えない人を追いつめ、結果的に滞納者を増やしています。一刻も早く発行をやめさせないと」。
同社保協では今後この問題で、発行の実態を明らかにさせ、厚生労働省に働きかけ、記者会見も行うなどし、発行の中止と国保行政の改善を求めていく方針です。
(民医連新聞 第1480号 2010年7月19日)