アスベスト対策 民医連全国交流会 診療と運動のレベルアップを
石綿(アスベスト)による疾患が増え続け、ピークは二〇年後といわれる中、全日本民医連は六月一二~一三日、アスベスト対策全国交流集会を開き、とりくみの経験交流と今後への意思統一を行いました。
一日目、田村昭彦医師(全日本民医連アスベスト対策委員長)が問題提起。「国の石綿救済法による補償はきわめて不十分。また年に二度健康診断が受けられる石綿健康手帳の交付も少数にとどまっている」と被害者救済が不十分な現状を報告しました。
また、民医連が各地で実施してきたシャーカステンセミナーで医師や放射線技師の読影力が向上したこと、多施設調査研究班の研究やアスベスト外来・健診のとりくみ、裁判支援などの成果を振り返りました。
次いで、今後の活動で重要な三つの柱を提起。(1)この間のとりくみや経験に学び日常医療活動のレベルアップをはかる、(2)アスベスト問題を担う人づ くりを発展させる、(3)アスベスト被害の予防と救済制度拡充の運動を発展させる、です。
記念講演は、宮城・仙台泉町診療所の広瀬俊雄医師。所属する日本産業衛生学会などの動向などについて語りました。
二日目は分科会。(1)医師、(2)看護師・技師、(3)事務・SWの三つに分かれ、経験交流を行いました。
北海道の本前陽子さん(勤医協中央病院)は、「病棟で肺ガン患者の入院時、石綿曝露職歴チェックシートを使い、誰でもきちんと職歴を聞けるようにしている」と報告しました。
議論も活発でした。「電子カルテにそもそも職歴欄がないのは問題だ」「現在は主婦や無職の人でも、昔の仕事を聞くことが重要。短期間でもアスベスト関連 の仕事に就いたケースがある」「毎朝のカンファレンスで、全入院患者のCT、レントゲンを調べ、その場で内科医全員にアスベストやプラークについて注意を 促している」「路上生活者、タクシー運転手に被害者が多いのでは。前職が建設関連という人が多い」「二年かけ県内各地で掘り起こし検診をすすめた」「共同 組織の力も借りて学習会や検診を行い、早期発見を」などの意見が出されました。
田村委員長は「とりくみを全国的なものにし、全職種が関わることが大切。アスベスト問題はこれからが本番。報道は下火になったが、患者は増えている。もっと活動を強めていこう」とまとめました。
(民医連新聞 第1479号 2010年7月5日)
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