NPT再検討会議 世界の流れは核兵器廃絶へ 日本原水協・土田弥生さんに聞く
NPT(核不拡散条約)再検討会議は五月二八日、一〇年ぶりの合意文書を採択して閉幕しました。「核廃絶へ向けた確実な前進を」 と、日本から民医連の仲間など一五〇〇人以上の代表団が、ニューヨークでの行動に参加。核兵器全面廃絶を願う六九〇万余の署名を届けました。会議の成果 と、日本の平和運動の役割と課題について、原水爆禁止日本協議会の土田弥生事務局次長に聞きました。
(聞き手・丸山聡子記者)
NPT再検討 会議の成果
今回の会議の成果は、「核兵器廃絶の方向へ動いた」ことです。
まず、その最終文書で、「核兵器のない世界の平和と安全の達成を追求する」と確認されたことです。これは、核兵器のない世界を目標とすることを明確にし たことであり、NPT条約上、初めて確認されたことです。あわせて、二〇〇〇年のNPT再検討会議で合意された「核兵器の完全廃絶を実現するという核兵器 国の明確な約束」が再確認されました。
二つめは、焦点となった、期限を切って、核兵器禁止条約をつくり廃絶を達成する、ということについてです。
一一八の国が参加する非同盟運動諸国が、禁止条約締結を中心とした二〇二五年までの核兵器廃絶のロードマップを提案しました。残念ながら、中国をのぞく 核兵器国(米、ロ、英、仏)の抵抗で、具体的な期限や国際会議の開催方法などについては最終文書から落とされましたが、「核兵器条約の交渉」を含むパン・ ギムン国連事務総長の五項目提案に「留意する」という形で明記されました。最終文書の総括部分にもあるように、多くの国が、「核兵器禁止条約」実現の重要 性を主張し、この点で大きな広がりがありました。
三つめは、一九九五年に決議されながら実現していなかった中東非核兵器地帯の創設についての会議を二〇一二年に開催することが決まったことです。
日本と世界の運動が動かした
私も行動に参加し、「世界は核廃絶の方向しかないという流れになっている。もはや後戻りはできない」ことを強く感じました。この流れをつくってきたのは、世界の反核平和運動です。
昨年、私たちは世界の運動のネットワーク「廃絶二〇〇〇」の総会で、再検討会議に向けた共同行動を提起しました。ニューヨークでの国際会議開催や行進、 核兵器禁止条約の交渉開始を求める署名の提出などです。署名は、同会議のカバクチュラン議長とドゥアルテ国連軍縮担当上級代表が受け取り、議長は「この熱 意にこたえることが使命だ」と語りました。
NGOが開催した国際平和会議でのパン・ギムン国連事務総長の発言は忘れられません。「核軍縮は遠い未来の達成できない夢ではない。」「私たちは必ず世 界から核兵器をなくすだろう。達成するのはみなさんのおかげで、世界はみなさんに感謝するだろう」。
核廃絶を確かな流れに
この流れにストップをかけているのが、アメリカ、ロシア、フランス、イギリスの核兵器国です。それが今回、鮮明になりました。
さらに日本政府も、「核兵器廃絶」で、唯一の被爆国としての役割を果たすことができませんでした。両者の態度の根本原因は、「核抑止力」への固執です。
NPT会議の中で、被爆者の谷口稜曄(すみてる)さんが発言したとき、スタンディング・オベーションとなりました。「長崎を最後の被爆地に。私を最後の 被爆者に」との訴えは世界を揺るがしています。NPT会議の成果の上に、八月の原水爆禁止世界大会で、次のステップへ大きく前進しましょう。
(民医連新聞 第1478号 2010年6月21日)
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