ハローワークとも協力、無料健康相談 国保の減免など政策提言 仕事ない、保険証ない 長崎民医連
長崎民医連は、ハローワークが入るビル内で無料健康相談をしています。二〇〇九年九月から無料低額診療事業(無低診)を開始し、 失業者・無保険・路上生活者などの実態を知り、「困っている人に事業のことをもっと知らせよう」という活動です。相談内容や問題点をまとめ、行政に提言も 行っています。二回目の五月三一日の相談会を取材しました。(村田洋一記者)
会場は市の中心街にあり、市民ホールや消費者センターなど公的施設が入居する多機能ビルの会議室です。三階にはハローワークがあります。
この日、ホールでは公共職業安定所による失業保険と再就職の説明会が行われ、二〇〇人近い人が来ていました。相談会はこの日にあわせて計画し、案内ビラ を同会場の廊下でも配布しました。会館内でのビラの配布は原則禁止ですが、今回は会館側が「どうぞ」と協力的でした。説明会には二〇~四〇代と見える人が 多く、深刻な雇用状況がうかがえます。
雇用も健康も不安
チラシを手に一八人が訪れました。特に困難な事例は無保険の人が三人、保険証があっても一部負担金の支払いが困難なために受診を控えていた人が二人、短期証の人が一人でした。
ハローワークの職員(就労支援アドバイザー)に伴われてきた、短期証の四〇代男性は、数年前に心不全で心臓カテーテル術を受け、うつ病の治療中断、B型 肝炎、腎機能低下もあるといいます。二年前に生活保護を申請しましたが、「車の保持」「身内がいる」などを理由に取り合ってもらえず「辞退」。家賃も滞 納、水道・電気・ガスも止められ、ホームレス状態で車中生活をしていました。この人には生活保護の再申請と身障手帳取得の方向で支援を開始しました。
前回、四月二一日の相談会では二時間に二二人が相談、四人が無保険。症状の重い三人が無低診を使って、すぐ受診しました。
無低診から相談会へ
無低診は長崎市内の大浦診療所、上戸町病院、花丘診療所、香焼民主診療所で実施しています。
周知のために近隣地域を訪問し、民生委員の例会や社会福祉協議会などで活用を呼びかけ、長崎市の生活保護課やハローワークに案内パンフを置かせてもら い、三月末までに六世帯八人が適用になっています。いずれも自己破産やホームレス、失業で困窮状態でした。そんな中、「医療機関まで来られない、困ってい る人が多いのではないか」という意見も。「直接話し、相談に乗ることができれば…」。大浦診療所事務長の岡田孝裕さんの提案から相談会が始まりました。
相談会終了後に、長崎労働局・社会福祉協議会・長崎市福祉保健部に内容を報告し政策提言を行っています。今回も六月四日、最初に長崎労働局に出向き、政策提言しました。
その一つは国保税の減免制度を拡大することです。失業後は国保税が高くて、国保の加入手続きをしないのが実状です。もう一つは国保法四四条に基づく窓口 一部負担の減免。同市の適用基準は厳しく、現在まで適用者はありません。そのほか、必要な人に生活保護の案内をすることや無料低額診療制度の広報も求めま した。
“無低診”の強み実感
この日、相談や案内にあたったのは各事業所の職員二〇人と友の会員六人です。六つのブースに分かれて相談を受けました。
上戸町病院看護師の江口岐代さんは「保険証がないなんて大変なことです。病院に相談に来るのは敷居が高いのでしょうね。今日のような相談窓口を設けるの はいいことだと思う」。大浦診療所の隣にある、たんぽぽ薬局事務三年目の柿本奈々さんは「訪問などで患者さんや地域の人と話すのが楽しくて、今回の相談会 にもぜひ参加したいと思っていました。仕事が人のためになり、生きがいにもなる民医連に就職してよかった」と語っていました。
岡田事務長は「無低診で路上生活者も受診できます。最近では行政からの紹介も増え、労働局や保健局、生活保護の担当者が無低診のパンフレットがほしいと連絡してきます」と語ります。
県連事務局次長の山崎倉俊さんは「ホームレス支援の夜回りなどをいっしょにやっているキリスト教会の牧師も無低診を喜んでくれています。今後もマスコミ にも知らせ、医学生や看学生も相談会に誘いたい」と抱負を語りました。
六月には近隣の小学校の訪問も予定され、さらに困難事例をもとに県や市との懇談も計画中です。
無低診から、活動や共同が広がっています。
民医連新聞 第1478号 2010年6月21日)