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民医連新聞

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やったぞ 国保税引き下げ 鹿児島県・霧島市/国分生協病院 有権者の一割以上が署名 3年ごし、市民の力示した

  国分市と六町が合併し(二〇〇五年)、鹿児島県で二番目の人口一二万人余になった霧島市。国民健康保険税が引き上げられ県内で最高値に。それから三年越し の住民運動が実り、五月末、市は「二万六〇〇〇円(年収二五五万円、共働き四人家族世帯で)引き下げる」との意向を示しました。国分生協病院の職員をはじ め市内の団体や個人が、「医療を受ける権利と地域医療を守ろう」と手をつなぎ、ねばり強く働きかけた結果です。(村田洋一記者)

二度の否決にも負けず

 合併前の行政当局は「負担は少ない方に、サービスは高い方に」とメリットを強調していたのに、〇七年四月、国保税が引き上げられ、住民は怒りました。
 国分生協病院も加入する姶良(あいら)地域社会保障協議会は、六月には「国保問題シンポジウム」を、八月には「国保一一〇番」の電話相談を実施しました。調べると資格証明書の交付も合併で二倍以上に増えていました。
 九月に「国保税引き下げを求める陳情」署名活動を開始、一二月には七一〇〇筆を集約しましたが、陳情は市議会で大差で否決、市長との懇談会も不調に終わりました。
 そこで、運動をもっと多くの市民に広げようと「霧島市の国保税引き下げを求める市民の会」(市民の会)を〇八年七月に結成。〇九年四月から新たな陳情署 名を開始。八月には有権者の一割を超える一一六六三筆に達しました。
 ところが、市議会の担当委員会は否決し、本会議では二二対二二と同数に割れ、議長採決で否決してしまいました。過去に例のないできごとにマスコミが大きく報道しました。
 国分生協病院の吉見謙一院長は「本当にドラマチックな負け方だった」と当時を振り返ります。
 この時の署名では、地域医療を守る運動を通して関係を築いてきた医師会や歯科医師会、薬剤師会の中からも多くの賛同・協力者を得ました。
 市民の会は次の運動を組みました。一一月の市長・市議会議員選挙では、すべての候補に「国保税引き下げ」について公開質問状を送付、結果をマスコミに公 開しました。引き下げを公約した市長候補は現市長に二〇七票の僅差で負けましたが、引き下げを約束した市議が高位当選しました。
 続いて市民の会は、一二月の新議会に三度目の陳情書を提出。今回は継続審査となりました。
 今年一月には市長との懇談会を行い、約三〇人の市民が一時間半にわたり直接訴えました。 
 この場で、吉見院長は事例をあげました。「リストラされた五〇歳代の男性は保険証がなく、頚部のおできが大きく腫れあがるまで重症化してやっと来院し た。いま、このようにがまんして症状を悪化させた患者がたびたび当院に来る。これは国保税が高くて払えず保険証を取り上げられる人が増えていることが原因 だ」と強調しました。
 ついに市側も「六月議会で何らかの軽減策を検討したい」と回答。マスコミも報道しました。
 継続審議になっていた陳情書は二月に一転して委員会で全会一致で採択、三月本会議では賛成二七反対六の賛成多数になりました。
 市長は「一般財源からの繰り入れを六月議会に提案し、四月に遡って実施したい」と表明しています。

医師たちも地域に出た

 五月二〇日に市民の会幹事会が開かれ、約束の六月議会が目の前に迫り、「どんな提案が出されるのか、小手先の軽減策では許さない。最後まで手を緩めない」という闘志が伝わってきました。
 市民の会代表委員の原口兼明さん(県保険医協会副会長)も「約束をきちんと果たさせたい」と意気盛んです。事務局長を担う国分生協病院の濵﨑信裕さん (薬剤師)は「今回の陳情が通ったのは粘り強く運動し、署名を集めきったから。組合員さんも職員も大奮闘しました」と語りました。病院も十数回の統一行動 を行い、職員と組合員が集めた署名は全体の半数近くになりました。
 院長をはじめ、多くの医師も地域に出ました。「地域に出て直接、困難をかかえた人から話を聞くことができました。霧島市も全国と同様に貧困が広がり、無 保険や短期証の人が増えています。問題は国保税引き下げだけでは解決しません。無料低額診療事業も行って、窓口負担の軽減にもとりくみたいし、相談活動な どもすすめていきたい」と吉見院長。
 幹事会では、五月二三日に「国保税一一〇番」を実施してさらに実態をつかむこと、約束が後退しないよう六月議会に市民の目を向けていくことなどを決めました。

(民医連新聞 第1477号 2010年6月7日)