フォーカス 私たちの実践 人工呼吸器患者の口腔ケア 鹿児島・国分生協病院 手順書やカフ圧計使用などでケアは向上、リスクは軽減
気管内挿管中の患者への口腔ケアは、抜管や誤嚥のリスクがあり、不安やためらいのあるケアの一つです。鹿児島・国分生協病院の呼吸器病棟では、手順書の作 成やカフ圧計の使用、ケアは二人で行うなどの改善を行い、患者のケアを向上させ、リスクを軽減させています。第九回学術・運動交流集会で、長友幸美さん (看護師)が発表しました。
当病棟には、これまでケアの手順書が存在せず、対応する看護師によって方法が異なっていまし た。ケアは一人で実施し、ガーゼをイソジン水・重曹水・お茶などに浸し、指ガードや開口器を使用して、口腔内を清拭していました。また、ブラシやスポンジ ブラシを用いて洗浄後、オーラルバランスを塗布し、乾燥予防に努めていました。しかし実際のところ、ブラッシングはあまり行われていませんでした。
これらを改善しようと見直したところ、問題として、口腔ケアに関する学習不足や確実なマニュアルが存在しなかったことがわかりました。また、一人ではで きない手技があったり、誤嚥などを引き起こすことへの恐怖感もあったと、スタッフから意見が寄せられました。
二人で実施する
そこで今回新たに改善したのは次の四点です。
(1)口腔ケアの手順書を作成する
これにより、手技の統一ができ、不安を軽減できました。
(2)カフ圧計を用いる
カフ圧計で圧を加えた時のチューブの状態を学習し、恐れていた誤嚥のリスクも解消され、躊躇することなく確実にうがいができるようになりました。また、気管内への細菌流入も予防できます。
(3)歯ブラシを使う
口腔内は、ただ清拭するのでは歯垢や痰を十分に除去できませんでした。ブラッシングで機械的な力を加える方法に変更して除去することができ、清浄化や感 染の予防ができました。またブラッシングによるマッサージ効果で、歯肉の血行改善と唾液の分泌促進につながりました。さらに審美的な面での改善も実感でき ました。
吸引付き歯ブラシの使用は、汚染された洗浄液の貯留を防ぎ、汚染液の流入防止にもつながったと考えられます。
(4)必ず日勤帯の医師・看護師が多数いる時間帯に二人で実施する
二人で実施することで、短時間かつ効率よく行えます。また、患者への苦痛も軽減すると思われます。必ず病棟医のいる午前中に行うことで、緊急時の対応ができるという安心感も得られました。
継続が課題
今後の課題は、一日に一回確実に統一した手技で行い継続化させることと、口腔ケアの有効性を他病棟へも普及していくことです。
現在当病棟では、呼吸器感染予防を目的とした呼吸サポートチームの立ち上げにとりくんでいます。今回の口腔ケアの改善がチーム始動に向けた第一歩になり ました。今後も、呼吸器感染予防に目を向けた看護活動をすすめていきたいと思います。
(民医連新聞 第1475号 2010年5月3日)