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民医連新聞

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全国初!群馬で15歳まで所得制限なし 医療費窓口無料 外来も入院も 親たちの運動が知事選の公約に反映

 「親御さんの負担を心配せず、必要な検査や治療ができるようになりました」。群馬・高崎中央病院の鈴木隆院長(小児科医)は話し ます。群馬県は昨年一〇月から、全国で初めて、県として所得制限なく、外来・入院ともに中学卒業までの医療費を完全窓口無料にしました。(丸山聡子記者)

 「所得制限なしというのがいいですね。すべての子どもが無料というのが一番」と言うのは、藤岡市の 真々田(ままだ)好美さん。一歳五カ月の凪沙ちゃんの子育て中です。今は高校生になった上のお姉ちゃんは、シングルマザーで育てました。「保育園ではよく いろいろな病気をもらってきました。そのたびに仕事を休まなければならず、休めば収入減。母子家庭への医療費補助すごく助かりました。子育てはお金がかか る。医療費だけでもお財布の心配をしなくてすむのは、本当に助かります」。

30年前から粘り強く

 「子どもの医療費を無料に」は、三〇年以上前から県内の親たちの切実な願いでした。一九七三年に全 県でゼロ歳児の無料制度がスタートしたものの、その後は市町村まかせ。多くの自治体で小学校入学までの無料が実現しましたが、県の制度は入院が四歳まで、 外来で二歳まででした。
 新日本婦人の会や民医連、教育団体などは、署名を集めたり、県に要請するなど、粘り強い活動を広げてきました。完全無料化を望む声は県内全域に広がり、 〇七年七月の県知事選では、五人の候補者のうち四人が「子どもの医療費を無料に」と表明。「義務教育が終了する一五歳まで拡大」と公約した大沢正明氏が当 選しました。
 当初大沢知事は、中学卒業まで拡大する一方で所得制限や自己負担などの条件を設けると表明しました。しかし、これには県民が猛反発。完全窓口無料化を求 めました。県民世論を受け、〇九年度予算では、前年度比四〇%増の約二五億六八〇〇万円を計上し、昨年一〇月に制度が始まりました。

将来の分まで安心

 「助かります。ほんっとーに」と言うのは、三歳の娘さんを連れて高崎中央病院に来たAさん。娘さん は前の週に高熱を出し、四日間入院。弟も保育園に通い、よく交互に風邪をひきます。「民間の保険だと手続きがあり、お金が戻ってくるまで時間がかかりま す。窓口負担がいらないこの制度なら、まとまったお金を用意しなくていい」とAさん。
 Bさんは、小学三年生の娘さんと来院。「三人きょうだいなので、みんなが病気になるとけっこうな額になる」といいます。娘さんにはアレルギーがあり、三 年間薬を飲んでいます。「毎回三〇〇〇円以上かかるとなると、さすがに『うっ』と思います。子どもにガマンさせたくはないけど、やっぱり家計には痛い。ア レルギー治療は長くかかるので、中学まで無料になり、将来の分も安心しました」。
 鈴木医師によると、無料制度が始まる直前、「検査は一〇月以降に」と言う親もいました。鈴木医師は言います。「子育て中の親は収入も少なく、支払いにシ ビアです。社会保障全体が切り崩されてきたもとで、せめて子どもたちの医療は、お金のことを気にせず、安心して受けられるようにする。当然のことで、重要 です」。
 医療費無料化の運動は、年齢や対象範囲を徐じょに広げ、償還払いから窓口負担をなくすなど、長い時間をかけて制度を改善してきました。鈴木医師は、「次の課題は予防接種」といいます。

全国に広げたい

 藤岡市の黒沢めぐみさんは、一歳の聡汰くんの新型・季節性のインフルエンザとヒブワクチンの予防接 種を受けました。「合わせると万単位になり、きょうだいが多い家庭では、もっと大変。でも、受けずに悪くするより、ずっといい。子どもたちが健やかに育つ ように、予防接種も無料の対象にしてほしい」と黒沢さん。
 他県から引っ越してきたCさんは言いました。「前に住んでいたところでは、小学校入学前でも、一回の受診で二〇〇円とか五〇〇円の負担がありました。た かがワンコインでも、薬局やいくつもの科を受診するとなると大変です。友人も、『群馬みたいに中学まで無料なら、子どもがもう一人ほしい』と言います。子 育て支援として、全国に広げてほしい」

(民医連新聞 第1469号 2010年2月1日)