地域に根ざす医師育てる 中小の臨床研修病院守れ 緊急インタビュー
医師臨床研修制度見直しに伴う「激変緩和措置」が継続されるか否かの議論が始まっており、基幹型臨床研修病院から中小病院を排除 する事態が進行しようとしています。二月には結論が出される見通しであり、改善に向けた運動が急務です。遠藤隆・全日本民医連事務局次長に聞きました。
新入院3000で切る?
新医師臨床研修制度の見直しによって、年間の新入院患者数三〇〇〇人以下の病院を臨床研修指定病院から外すことや、都道府県ごと、病院ごとに研修医の受け入れ上限を設定し、全体の募集定員を削減することが決められました。
これに対し昨年、一二四一ものパブリックコメントが厚労省に寄せられ、反対意見が大多数を占めました。厚労省は二〇一〇年度まで「基準を満たさない病院 でも受け入れ実績があれば指定を継続する」「募集定員を各都道府県の受け入れ実績から一〇%以上削減しない」などの激変緩和措置をとりました。
これによって現在、入院患者年間三〇〇〇人以上などの指定基準をみたしておらず取り消しの対象とされた病院であっても、九二の病院が受け入れを継続しています。
しかし、この措置は単年度ごとに継続か廃止を検討することになっています。一二月一八日、医道審議会医師臨床研修部会が開かれ、二〇一一年度以降について議論が始まりました。
緩和措置は継続を
部会では、「措置を続けていては基準を見直した意味がない」と廃止を求める意見が大学関係者を中心に強く出されました。一方、「地域の実情など考慮し、措置は継続した方が良い」「慎重に対応すべき」など、措置の継続を求める意見もあい次ぎました。
二月三日の部会で、一定の結論を出すとしています。それまでに、「継続」を求めている委員を激励し、「廃止」を求める委員とも懇談の場をもつなどして、 中小病院の役割や民医連の考え方を理解してもらうとりくみが緊急に必要となっています。
地域医療に悪影響
国は二〇一〇年度、〇七年度に比べ一二二一人増という過去最高の医学部定員を決めました。今後一〇年間、さらに増員する方針です。こうした時期に、臨床研修病院や募集定員を削減する必要はありません。
基準未満で指定を継続している九二病院のうち、約三分の一が民医連の病院です。措置が廃止されれば、民医連の五七の臨床研修病院のうち、約三〇の病院がその役割を果たせなくなります。
民医連はこれまで、「プライマリケアを地域で実践できる基本的診療能力を持った医師」の養成をめざして、研修を充実させ、地域医療に貢献してきました。 厚労省交渉では、研修医からも「救急・急性期から慢性期までのさまざまな疾患を診ることができた。地域に根ざす病院での研修で、地域医療をささえるという 責任とやりがいを感じている」(鳥取生協病院・二年目)と、中小病院の締め出しについて反対の意見が出されました。
また、見直しで必修科目は、以前の七科目から三科目に減らされました。この四月から研修を開始する医師の半数以上が三科目のプログラムで研修を行うこと となりました。総合的な力量を培うことが難しくなり、地域医療崩壊の加速も懸念されます。
2月3日までに緊急行動を
私たちは、当面の重要課題として、現在の激変緩和措置の継続を訴えるとともに、本来あるべき医師養成とは何かを広く問い、研修制度の改善に向けたとりくみをさらに強化していく必要があります。
あらゆるつながりを生かして、部会メンバーへの働きかけを各地で行う必要があります。また、日本医師会の飯沼委員は、「措置は継続すべきであり、性急な 廃止には反対」と明言しました。各県の医師会への申し入れが重要となっています。昨年末に通達した民主党の県連や地元国会議員への働きかけと、民医連以外 の臨床研修病院や医療団体、行政などとの懇談・連携も、さらにすすめましょう。二月三日に向け、早い対応が大事です。早急に足を踏み出しましょう。
都立小児病院残せ
清瀬小児病院を守る会は一月四日、都内の駅頭で「子どもたちを守る小児病院をなくさないで」と宣伝しました。同院存続を石原都知事に求める署名一二三人分が集まりました。
東京都は都立病院の再編計画を強行し、その一環として三つの都立小児病院(清瀬小児、八王子小児、梅ケ丘)の廃止を計画しています。昨年夏の都議選で は、小児病院の存続が焦点となり、民主党も存続を公約として掲げました。
しかし一二月の都議会で存続を求める請願・陳情(六万三〇三三人分)に対し、民主党は自民党、公明党とともに反対し、不採択にしました(共産党、生活者 ネットなどは賛成)。今年三月に廃止予定で、地域には不安が広がっています。
清瀬小児病院は年間一万四〇〇〇件もの救急を受け入れていましたが、すでに受け入れをやめ、地域の小児救急が心配されています。「病院を続けてほしい」 「地域に頼れる病院がなくなるのは人ごとじゃない」と署名する人が目立ちました。(丸山聡子記者)
(民医連新聞 第1468号 2010年1月18日)
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