キラリ民医連の医療・介護 急性血液浄化法で救命した大腸穿孔術後の敗血症性ショック 山梨・甲府共立病院 飯窪護(臨床工学技士)
敗血症性ショックに対して急性血液浄化法が有用なことは数多報告されており、当院でも積極的に施行しています。重症例ではその救命率は低い状況ですが、 今回、大腸穿孔術後に起きた敗血症性ショックの患者に、約六時間にわたるPMX-DHP(エンドトキシン吸着療法)とPMMA-CHDF(持続的血液ろ過 透析)を併用し、ショック状態から離脱させ、救命することができました。
症例は八七歳女性です。二〇年前に大腸穿孔を起こし手術をしたことがあります。今回は、左下腹部痛・下血を訴えて当院を受診しました。穿孔の原因として は、癌などの所見はなく、二〇年前の吻合部の狭窄による、慢性的な通過障害からと考えられました。
緊急手術となり、術後に敗血症性ショックと判断され、PMX-DHPを施行しました。施行して一時間後、血圧が上昇、尿量も増加し、二時間後には、さら に改善し、六時間後には、昇圧剤を開始時の半量に減量することができました。そして、早期にショック状態から離脱することができました。その後、 PMMA-CHDFを施行し、血行動態を維持し、炎症反応を抑制することができました。
一〇日目に、二度目の緊急手術が行われましたが、術後の炎症反応の再上昇や尿量減少は、前回と同様にPMMA-CHDFによって抑制し、循環動態を改善できました。
当院では、本症例で急性血液浄化法の有用性をあらためて確認し、医局・技士・看護師で学習会を行い、現在では、こうした場合すみやかに施行するようにし ています。症例によっては、急性血液浄化法の施行条件や、人工呼吸器の設定も重要です。
患者の複雑な病態と治療方針をチームが迅速に把握・理解し、安全でタイミングの良い実施をすすめていきたいと考えています。
(民医連新聞 第1467号 2010年1月4日)