高齢者から保険証うばう後期医療制度はすぐ廃止を!! 私たち後期医療許せんGメンです 愛媛・新居浜協立病院
七五歳以上のお年寄りから保険証を取り上げる―。鳩山政権が後期高齢者医療制度の廃止を先送りするなか、高齢者の命が危険にさらされています。一年、一カ月の先延ばしが、痛ましい結果を招きかねない事態です。(丸山聡子記者)
愛媛・新居浜協立病院に市役所から電話がきたのは八月末のこと。同院を受診する高齢者が保険料を滞納しているため、短期保険証となっているが、取りに来ないので窓口で留め置いている、という連絡でした。
「高齢者が保険証をとりあげられている。命にかかわる事態だ」。佐伯和人・医事課長は、総看護師長(外来師長兼務)山岡美美さん、MSWの溝浦友子さん に連絡。山岡さんが患者のAさんのカルテを確認すると、診察予約日に受診していないことが今年に入って続いていました。「介護保険のケアマネジャーに聞く と、軽い認知症があるとのことでした」。
山岡さんと溝浦さんが訪問。近くに暮らす息子は失業し、無保険になっていること、Aさんと同居する孫はパートを二つ掛け持ちしていること、遺族年金があるものの、担保に入っているらしい…ということがわかりました。
Aさん本人に説明しても、なぜ保険証が取り上げられるのか、なかなか理解できません。やっと「保険証がないと病院にかかれず、困る」と納得。手元にあっ た現金六〇〇円と息子から借りたお金でなんとか間に合わせた一〇〇〇円を持って、山岡さんらと市の国保課に行きました。
保険証は渡せない
国保課では、「何度か訪問して納付を約束してもらったのに、納付がなかった。納付相談にきても らわないと保険証は渡せない」と説明されましたが、Aさんは訪問を覚えていない様子。市はAさんの症状や家族の状況をよく把握しないまま、短期保険証に し、そのうえ渡していませんでした。Aさんは一〇〇〇円を払い、短期保険証を手にしました。山岡さんが大きな紙に次回支払い期日と金額を書き、Aさんは自 宅の目立つところに紙を貼りました。
新居浜市で発行している短期保険証のうち、保険証留め置きは九件。同院の患者で短期証を発行されていた人が六人、うち三人が窓口で留め置かれていまし た。中には障害がある子どもと寝たきりの夫の介護をする八〇代の女性も。夫の保険料の支払いは途切れないよう気をつけていましたが、自分の分まで手が回り ませんでした。保険証がもらえないまま倒れ、寝たきりに。ケアマネの紹介で同院を受診しました。症状が重く、転院しました。別の市に住む六〇代の重度身体 障害の男性にも、短期保険証が発行されていました。
理解できずに悪質滞納者
溝浦さんは、「行政が『悪質滞納者』とした人たちには、高齢の独居で制度が理解できなかった り、家族がいても生活に追われて手続きが間に合わなかったりと、悪質と言えない理由が多い。普通徴収の人は低所得という事情もあります。守られるべき高齢 者や身体障害者の人から保険証を取り上げる後期高齢者医療制度そのものがおかしい」と指摘します。
全国で短期証発行が
以前の老人保健制度では、高齢者への保険証取り上げはありませんでした。しかし、後期高齢者医 療制度では、国保と同じく資格証明書の発行(事実上の保険証取り上げ)が可能に。資格証明書の前段階として、すでに四〇道府県が短期保険証を発行。愛媛県 の発行数は一三〇五件で全国五位です。
愛媛県社会保障推進協議会は社会保障キャラバンで、県内二〇市町のアンケートにとりくみました。和田宰事務局長は、「滞納のある高齢者に保険証を送ら ず、市に留め置く。取りに来させて“滞納整理”の契機にしようという方針にしていたのは、県内一一市で新居浜市だけ。対応の冷たさが顕著です」と話しま す。
全日本民医連は、後期高齢者医療制度の即時廃止を求める鈴木篤会長声明を発表。世界に類を見ない悪法は、一日も早く廃止することが求められています。
(民医連新聞 第1465号 2009年12月7日)