フォーカス 私たちの実践 危険予知トレーニング 石川・城北病院 多職種のチームが院内を巡視、改善はかる
石川・城北病院では、KYT(危険予知トレーニング)を行っています。多職種が職場巡視し、危険な個所を発見。安全性の向上に役立ち、職員の意識も変わっています(第九回看護介護活動研究交流集会でも報告されました)。
当院には、各部署の安全推進委員三二人で構成する安全推進委員会があります。〇七年度からKYTにとりくんでいます。
全部署の委員が参加し、看護部だけでなく病院全体で職場巡視を行い、安全対策を強めることにつながっています。
第一回目(〇七年一二月一〇日~〇八年一月一一日)を例に方法を示します。このときは、病室以外の検査室、廊下、洗面所、トイレ、浴室、ナースセンター内などを重点に点検しました。
看護師と薬剤師など、職種の異なる委員二人がペアを組み、自分の部署以外の職場を巡視しました。現場では業務に差しつかえないよう配慮しながら、当該部 署の職員から説明を受け、気になったり、危険と思った個所の写真を撮影しました。
写真を委員会事務局に集め、スライドにして安全推進委員会で意見交換しました。その後、指摘を受けた職場は改善をすすめ、結果をリスクマネジメント委員会(リスクマネージャー六人で構成)が巡視して確認しました。
「患者にとって危険」の視点
発見された問題点を紹介します。たとえば「廊下に車椅子やストレッチャーが置かれ、患者が手す りを使えない状態」。また「浴室の洗面台に、カミソリや洗剤が置いたままの状態」がありました。これは職員が使いやすいように置かれたものですが、患者に とっては危険です。「トイレや汚物室に洗剤や消毒剤が放置」「ナースセンターの棚の上部に重い吸入器などが置かれ、落下したとき危険」という指摘もありま した。
発見した危険個所は八〇に及び、「廊下の手すりの前に物」が一〇カ所、「洗剤や消毒剤の置き場」が九カ所、「整理整とんが不十分」が九カ所、「不安定な タイプのイスが患者用に使われていた」が四個所などでした。ほとんどが慣れや見逃しによるものです。
多職種の気づきが役立つ
その気になれば、すぐ解決できることも多くありました。たとえば、「生理検査室のベッドとマッ トのサイズが合わず、滑り落ちる危険性がある」という指摘は、当該部署では気づいていましたが、つい放置していたものです。他職種からの視点が役立ち、提 案を受けてすぐ改善されました。
とりくみを終えて、職員からは「日ごろは気づかなかった危険を認識することができた」「安全の視点でものを見る必要性を理解した」などの感想が出されました。
安全推進委員にとっても、医療安全を考えるトレーニングの場になり、モチベーションも上がりました。また、他の職場・他職種を理解し、コミュニケーションを深める機会にもなります。
成人の学習効果(平均記憶残存割合)は、講義ではわずか五%ですが、実施修練では七五%、他人に教えることでは九〇%といいます。現場巡視・フィード バック・改善・確認というプロセスは、身につく学習であり、院内の医療安全システムを自覚する機会と考えられます。
職員の誰にとっても、この活動の必要性はわかりやすく、多職種でとりくむ楽しい巡視でもあります。院内の安全性の向上に大いに役立っています。(津田真理子・看護師)
(民医連新聞 第1459号 2009年9月7日)