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民医連新聞

民医連新聞

医師 看護師 増やし・医療再生する政治へ ストップ医療崩壊 7・19シンポに900人 大阪南部

 日本全国で「医師不足」「救急車受け入れ困難」があいつぎ、地域は医療崩壊に直面しています。大阪府南部地域で七月一九日、「ス トップ ザ 医療崩壊 7・19シンポジウム」が開かれました。国民の命と健康にかかわる医療の問題をどうするのか―。四年ぶりに行われる総選挙(八月三 〇日投票)の大きな争点でもあります。シンポジウムに参加した医療従事者の三人に、「今度の選挙で、医療崩壊ストップを」の思いを聞きました。(丸山聡子 記者)

 呼びかけ人は、当地域の医師会長や公立病院長、開業医、大学病院医師、耳原総合病院の松本久院長など一三人。当日は、医療関係者と市民九〇〇人が参加しました。
 シンポジウムでは、全国自治体病院協議会会長の邉見(へんみ)公雄氏(赤穂市民病院長)と済生会栗橋病院副院長の本田宏氏が講演。邉見氏は、小泉内閣の 「骨太方針2006」以降、「消防と医療は聖域に」の訴えもむなしく、社会保障費の毎年二二〇〇億円の削減が強行されてきたことを批判。「病院は地域のコ ミュニティセンターであり、セーフティネットです。なぜ医療を目の敵にして削るのか、理解できない」と批判しました。
 本田氏は、日本の医師数がOECD平均と比べて二〇万人も少ない実態を告発。「これを偏在という厚労省はまったくおかしい。さらに社会保障費を削り続けているのだから、医療崩壊は当然だ」と指摘しました。
 市立岸和田市民病院の瀬戸嗣郎院長が、市立病院が医師不足で機能低下している実態を報告。樋上忍・堺市医師会長は、地域開業医の七九%が「収支悪化」、 八八%が「経営不安」を抱えていると報告しました。富田林(とんだばやし)市消防本部の芝池浩救急救命士は、〇六年ごろから一件あたりの出動時間が長くな り、予備の出動も常態化し、病院との連携もうまくいかなくなったと報告しました。
 シンポジウムでは、前記の五人と古河洋・市立堺病院院長、森口英世・富田林医師会長、松本院長が討論。「産業優先、市場原理優先の社会から、教育や医 療、福祉、保育を大切にする社会に変えていこう」との発言があいつぎました。厚労省に対し、医療費抑制政策をやめること、自治体病院への真の経営改善援助 を行うこと、医師不足解消、医学部定数の増加、医師の労働条件改善にとりくむこと、そのために診療報酬の改善を実施すること―を求めていくことを確認しま した。
 参加した耳原ファミリークリニックの看護師・長川堂(はせどう)晶子さんは、「経済的理由による慢性疾患の治療中断が増えています。息子の失業で、介護 サービスをやめたお年寄りもいました。今日確認された項目は、本当にその通り」と話しました。

総選挙 あなたが主役

患者・医療者守る選択

「医療崩壊ストップ」を選挙の争点に

済生会栗橋病院副院長 本田 宏さん

 前回の総選挙以降の四年間で、医療や社会保障をめぐる国民の世論は大きく変わりました。第一 に、医療崩壊の現実が国民に理解されるようになったこと。第二に、その原因が医師不足にあり、経営赤字と結びついていると知られてきたこと。第三に、根底 には低医療費政策があることが以前より広く知られるようになったこと―です。全国で社会保障費二二〇〇億円削減の悪影響が吹き出している現実の反映でもあ ります。
 日本政府と官僚がやるのは、対症療法です。診療報酬の改訂などを見ても、場当たり的で、もぐらたたきのようです。本当に解決するには、医師の養成数を増 やすとともに、恒常的に病院の経営が立ちいくように診療報酬を上げるなど、抜本的な見直しが必要です。
 財源はどうするのか。いまなぜ国民が納得して負担できないかというと、税金の無駄遣いが放置されたままだからです。国民にさらなる税負担を求めるのなら、高額所得者や大企業の応分な負担も必要です。
 「日本は税金が安い」という論調がありますが、安いのは大企業だけ。日本は教育や医療の負担が高いことを忘れてはなりません。諸外国では無料も多く、日本のように国民が高額な負担をする国はありません。
 総選挙では「政権交代」が注目されています。政権交代が実現したとしても、油断は禁物、必ず別の問題が生じるのが歴史の必然だからです。これですべて問 題解決、ということはありません。目の前の問題を明るく前向きに解決し、建設的に物事を考えていく主体性を日本人が持てるようになることが一番重要です。 ピンチはチャンス、今度の選挙は、国民が真の民主国家の担い手として立ち上がるきっかけになる千載一遇の機会です。そのためにも「医療崩壊阻止」を、選挙 の大きな争点にしていきたいと思います。

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国民の立場で政策を実践できる政党を

耳原総合病院長 松本 久さん

 この間、医療崩壊をストップさせようと、学習会など様ざまなとりくみをしてきました。「医師増やせ」の署名を集めるために、近隣の病院を回ると、どこの病院も大変な状態に置かれていることがわかりました。
 シンポジウムを準備する中で、民医連の枠を超えて多くの医師や市民、地域の病院、医師会、自治体などとのつながりが広がりました。多くの病院が危機にあ ることの反映でもあります。自分の病院の中だけでは解決できない問題を、どこの病院も抱えているのです。
 四年前の総選挙では、小泉旋風が吹き荒れました。しかし、この四年間で、小泉「構造改革」は国民に苦しみを与えるだけだったと、多くの人は気づいていま す。総選挙は、患者、住民、医療従事者が主役になるようにしなければなりません。
 自公政権は、長きにわたって医療と福祉を切り捨ててきました。民主党が政権をとっても、きちんと国民の立場で政策を実践するには、どうしても共産党の躍 進が必須です。今度の総選挙では、現在の医療崩壊をストップさせるようなたたかいが必要です。

医療は無料で受けられるように

耳原総合病院内科病棟師長 渡辺 未世さん

 私が働く病棟は、腎臓疾患や重度の糖尿病、リウマチなど、慢性疾患の患者さんが入院しています。長期の入院が必要な人が多いのですが、なかなかそうもいきません。
 人工呼吸器を使っている患者さんが退院するとき、奥さんから「ここにいさせてほしいんや」と言われました。思わず頭を下げると、「小泉さんがしたことや ろ。わかっとるけど、つろうて…」と言われ、いっしょに泣いたこともあります。こういうことを重ねていると、人間がすたれていくような気がします。
 私が新人のころは患者さんから「がんばりや」と言われ、励みになったものです。最近は時間がなく、若い看護師に「早く仕事しなさい」と言い、患者さんと の会話を切り上げさせるのはつらいです。医師、看護師が足りない。一日でも早く整備してほしい。医療全体の課題です。
 今までは「しんどいのは当たり前。しんどいと思うたらいかん」と自分に言い聞かせていました。でも声を上げないとひどい医療政策を変えることはできん。患者さんのためにも大事なんやと気づきました。
 老人医療費が無料だった黒田革新府政を知る年配の患者さんは、「黒田さんのときは良かったで。いまはあかんなあ」と言います。別の患者さんは「朝食と昼 食はいっしょやから、インスリンも朝は飛ばしてんねん」と。医療は無料で受けられるようにせんといかん。

(民医連新聞 第1458号 2009年8月17日)