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民医連新聞

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変えよう!命に冷たい政治 8・30選挙に行こう 命を守る地域訪問月間 北海道・道南勤医協

 「命を守る地域訪問月間」にとりくんだ道南勤医協・稜北ブロックの職員・友の会員たち。函館稜北病院の周辺地域を軒並み訪問する中、あらためて住民の生活の厳しさに触れ、社会保障の弱まりに憤り、「命と暮らしを守る政治」への思いを強くしています。(小林裕子記者)

無料・低額診療知らせよう

 「月間」は六月一五日からの一カ月。四月から開始した無料・低額診療を知らせ、医療と介護の改善を求める署名を集め、困りごとの相談に乗ろうと実施しました。
 毎週水曜日、職員と友の会員が集まって、スーパー前で宣伝してから、二人ひと組で訪問行動へ。一カ月で約九六五軒を訪問、三四〇軒で対話、医療・介護それぞれ三九三筆以上の署名を集めました。
 「ここ数年、函館駅周辺にホームレスが目立つようになった」と同院の事務次長・武井啓二さん。この地でも大手電子部品・半導体メーカーが数百人を「派遣 切り」。函館社保協の相談会には「解雇され函館に帰ってきたが仕事がない。やむなくホームレスに」など厳しい相談が寄せられています。
 駅に貼った「命を守る」ポスターを見たり、友の会員からチラシをもらって、同院へ来る人があい次ぎました。そこで、もっと多くの人に知らせようと「月間」を設定。制度の事前学習をして臨みました。
 七月八日は職員一六人、友の会員五人が一〇組で訪問しました。本間勝美さん(同院SW)と富樫アキ子さん(友の会員)のチームは同院から二kmほどの八 〇戸の市営住宅へ。一軒ずつ「稜北病院からお知らせに来ました」「何か困っていることはありませんか?」と声をかけて回りました。

「孫が定職に就けない…」

 七〇代の女性。「友の会に入ってますよ。夫が三月に亡くなって…。介護保険のないころ倒れたので、あちこちの病院に入院したが、稜北病院では本当に良くしてもらった」と快く署名に応じました。
 別の七〇代女性。「同居の孫(二〇代)がアトピーなんです。仕事が不安定で月五万円ほどの収入。市に相談して短期保険証をもらっていますが…」。説明を 聞いて、ほっとした表情を見せました。お孫さんは働きたいのに定職がなく、夜のレストランや交通警備員のアルバイトといいます。
 無料・低額診療を必要とする人に直接、制度を知らせることができました。

身近にいる困難を抱えた人

 訪問を終えて事例を出し合いました。
 「若い人がリストラされて『税金が払えない、病院にかかるお金もない』と言っていた。実際に身近にこういう人がいるなんて、一番ショックだった」と京谷 利夫さん(友の会員)。会員宅の訪問では知ることができない実態でした。

「署名、ありがとう」の声も

 「夫婦で年金が月一五万円というお宅では、生活が苦しく病院の一割負担がたいへんと話してい た。難治性肝炎という四〇代男性は、公費助成が切られて中断していた。タクシーの運転手で、収入は生活保護を下回る水準という」。石田卓也さん(事務)は 二人に無料・低額の利用をすすめました。また、線香の香る家ではチャイムを押そうか迷いました。出てきた五〇代の女性は夫をガンで亡くしたばかり。入院一 カ月で退院を迫られた体験を話し「あなた方がやっている署名の大事さがよくわかった。ありがとう」と。石田さんは父を亡くしたときのことを思い出し、心を 打たれました。
 「膝と腰が悪い高齢者が、介護度が低くてサービスが足りない、保険料は払っているのに何だ、と怒っていた」と丸田宗広さん(介護福祉士)。「介護ウエー ブを盛り上げなくては」と思いました。「地域を身近に感じて、勉強になった」。研修の空き時間に参加した新人看護師二人の感想です。
 「職員といっしょで元気がでました。前回の訪問で終わりの時間が迫ったとき、初参加の看護師さんが『もう少しだから、やってしまいましょう』って。感激 しました。対話も広がったし」と富樫さん。それぞれが思いを深め、お互いの信頼も強めたようです。

「給料日まで待って…」

 本間さんは、その日受診した三〇代女性の例をあげました。具合が悪くなり「受診したいが、支払 いを給料日まで待ってもらえないか?」と数軒の病院に電話。すべて「ウチはそういうことはやってない」と断られ、ある病院が「稜北病院でやっている」と教 えたそうです。女性は幼児と病身の母を抱え、収入はパート給料八万円と児童扶養手当四万円。母の入院費を毎月五〇〇〇円分割払いしています。母は退院後、 受診を中断していました。国保料は滞納、年金保険料など「とても払えない」状態。それでも生活保護は「受けないでがんばりたい。夜も仕事をしたい…」と。 本間さんは保護が必要なのに受給しない、できない実態があることも話しました。
 検査技師でもある武井さんは「最近、検査を断る人が増えた」と言います。費用が心配なのです。「お金があったら長生きできるんでしょうが…」と嘆く人も います。「社会保障が壊されている。弱者に対して冷たい政治がある。制度を変えなくては」と言葉を強めました。

「真実をよく見て」

 「一番困っているのは社会の底辺にいる人。そこに国の支援が少ないと思う。『後期高齢者』なんて国が勝手に決めたが、一定の年齢になったら国が面倒を見て当たり前では」と北川守さん(友の会員)。
 「でも、本当に必要な人に支援が届かないのは、働きたくない人や不要な人へお金が回るからでは?」。新入職員からこんな疑問があがりました。
 「マスコミが不正受給など悪い例ばかり強調するから、視点がズレてしまうね。でも、目の前の患者さんや困難な人の事実をしっかり見ていこう」「がんばっ て働いても収入が生活保護水準より低い世帯が増えている」「生活の苦しさから他人を『あの人たちは…』みたいに言う人もいるけれど、本当の原因を考えよ う」など先輩たちからの助言もあり、話題は、税金の取り方、使い方へ。
 「社会保障費の毎年二二〇〇億円削減が問題だ」「消費税を導入したとき、政権党は高齢者の福祉や医療に使うと説明してだました。若い人には目を見張って 世の中を見て、そして選挙に行ってほしい」。政治を変えたいとの思いも噴出しました。

(民医連新聞 第1457号 2009年8月3日)