「医療費窓口負担軽くできる」 秋田・中通(なかどおり)総合病院 「国保法44条」活用で
国民健康保険には、支払いが困難な人の医療費の窓口負担(一部負担金)を減免する制度があります。国保法四四条に定められています。秋田市の中通総合病院では積極的な活用をすすめています。(丸山聡子記者)
「医療費が免除になり、助かりました」。秋田市内で闘病する木村秀悦さん(43)はいいます。一昨年、中通総合病院のSW・田中誠さんのすすめで、一部負担金の減免制度を利用しました。
木村さんは十数年前、脳梗塞を患って仕事を失い、現在母と二人暮らしです。わずかな貯金と母の年金だけが頼り。親子の生活費は月五、六万円がやっとです。
二~三年前から腎不全となり、入退院を繰り返しました。支払いの困難を田中さんに相談し、免除を申請。二〇〇七年一月から三カ月間、医療費が免除となり、入院することができました。
「脳梗塞のとき、医療費が払えず治療を中断しました。田中さんのおかげで制度を知り、お金の心配をせずに治療を受けられました」。その後、障害者手帳を受け、医療費は免除となりました。
一部負担金減免って?
この制度は「特別な理由」で支払いが困難と認めた人を対象に、その医療費窓口負担を保険者(自治体)が負担し、減免するもの。
秋田県は一九九〇年、「秋田県生活と健康を守る会連合会」との交渉で、「医療費の支払い能力」とは「健康で文化的な最低限度の生活をしたうえでの余力で あり、借金をしたり教育費・出産費用などの最低生活費を削っても支払えというものではない」と回答。九四年には市町村に事務連絡を出し、支払い能力の有無 の判断は「生活保護基準」としました。
SWの田中さんは、「実際には生保基準以下の生活をしながら、『生保を受けずにがんばりたい』という方もいます。その思いを尊重し、制度を活用していま す」といいます。同院の支援で、年間二〇人ほどが利用しています。
運用拡大で生活支援を
厚労省の調査では、減免の条例や規則を定めているのは一〇〇三自治体で、全自治体の五五%。 「特別な理由」として認めているのは「災害」「失業」が多く、「低所得」も対象にするのは一五五自治体にとどまり、減免の実施件数は全国で一万七六四件 (〇六年)。同省は、条例などを定めなくても、国保法の規定で直接、減免が可能としており、秋田県のようなやり方で実施自治体を増やせます。
一方で、「秋田県生活と健康を守る会連合会」の鈴木正和会長は「近年、申請しても却下するケースが増えている」と指摘します。「前年度の収入から半減」 などを基準にし、恒常的な生活困窮状態は除外しているためです。もともと生保基準の八割しか収入がなかった世帯がさらに七割を切って申請しても、「半減し てない」と却下され、裁判をしています。
日本共産党の小池晃参院議員(医師)は六月の参院厚生労働委員会で、「自治体のとりくみを国としても支援し、拡充することが必要だ」と求めました。舛添 要一厚労相は、「(自治体の)負担の半分は国が見るかたちで検討をすすめている」と答弁。自治体への働きかけが重要です。
後期高齢者は除外?!
新たな問題も発生しています。後期高齢者医療制度には国保法四四条にあたる減免規定がなく、七五歳以上の人は減免されません。
木村さんの母親(75)は先月、がんの手術で入院し、退院後も外来で抗がん剤治療を受けています。月二回で約七万円。医療費免除の制度はありません。市 役所では「いったん窓口で払ってもらい、自己負担限度額の八〇〇〇円(外来の場合。入院は月一万五〇〇〇円)を超えた分は、三~六カ月後に返還する」と言 われました。
「あとから戻ってくるなら、なぜ窓口で払わなくてもすむようにしてもらえないのか」と木村さん。「母は副作用で苦しいときも、お金を気にして受診を思いとどまっているようで、見ていていたたまれない」。
田中さんも「後期高齢者医療制度の問題点がまた明らかになった。まずは改善と、同制度の廃止を求めたい」と話しています。
(民医連新聞 第1455号 2009年7月6日)