原爆症 集団訴訟、ついに18連勝 一刻も早く全員救済を
原爆投下から今年で六四年。「原爆症の申請を却下したのは不当」と、集団訴訟が全国でたたかわれています。五月二八日には、東京一次訴訟の東京高裁判決が 言い渡されました。国が行った認定却下処分を、一人を除き取り消す内容で、国側は一八連敗。全国の原告三〇八人のうち六八人はすでに亡くなり、国がいたず らに裁判を長引かせることは許されず、一刻も早い救済が求められています。
午前一〇時すぎ、東京高等裁判所前。雨が降りしきる中、若い弁護士が「勝訴」と書かれた垂れ幕を広げました。この瞬間、「やったー」という声が上がり、集まった原告や支援者みんなで万歳三唱を行いました。
原告団長の山本英典さんは、「すばらしい判決が出た。みなさん、ご協力ありがとうございました」と喜びを語りました。
画期的な判決の中身
今回の判決は、「新しい審査の方針」(注)が認めていない遠距離被爆者のがんや非がん疾患の放射線起因性を積極的に認めた、画期的な内容です。
勝訴した原告の申請疾患には、前立腺がん、直腸がん、甲状腺機能低下症やバセドウ病が含まれ、判決では「学問的な成果も考慮に入れて放射線起因性の有無 について審査すべき」とし、「審査の方針には問題があり」、「適格性を欠く」と明快に言い切っています。
また、爆心地から五キロメートル離れた地点で被爆した人や、投下から一二〇時間以降に被爆地に入った人も認められました。
さらに、被爆者の救済は「単なる社会保障的な観点にもとづくものではなく、戦争遂行主体であった国の国家補償的措置として行われるもの」と原告の主張を全面的に取り入れました。
国は全員救済を
たたかいは、いま最大のヤマ場を迎えています。かねてから、河村建夫官房長官は「東京高裁判決がタイムリミット」と明言していました。
六月九日、舛添要一厚労相は記者会見で上告断念を正式に表明。また、敗訴した原告を含む全員の救済については「官房長官と相談し、最終的には首相の決断 を仰ぎたい」と語りました。認定基準の見直しについては「八月の原爆の日までに結論を出したい」と同日、政府高官がのべました。
原告たちは、全員救済を求め六月九日から四日間、再び座り込みに入りました。全国弁連の宮原哲朗事務局長は、「あとは河村長官と麻生総理の決断を待つば かりです。全面解決まであと一歩。全員救済を勝ち取るまでがんばりたい」とのべました。
(注)新しい審査の方針
〇八年四月から始まった認定審査の新しい方針。国の敗訴が続いたため、認定審査の基準を緩和した。しかし、距離や疾患で線引きするなど問題が多い。
談話(要約)全日本民医連被ばく問題委員会 判決での甲状腺疾患に対する判断は、医師団が提出した甲状腺機能低下症にかんする補充意見書の見解や、証人尋問でのべた見解と一致する。 |
(民医連新聞 第1454号 2009年6月15日)