フォーカス 私たちの実践 糖尿病チームに加わって 群馬・利根歯科診療所 歯科検診と聴き取りで“要治療の人”見つけ“口の意識”づくり
利根中央病院と利根歯科診療所は、糖尿病患者を長期にサポートする多職種のチームを発足。歯科のかかわりの大切さを歯科衛生士の林里美さんが発表しました(第一八回歯科学術運動交流集会)。
糖尿病とその予備軍は全国で約一三七〇万人といわれます。利根沼田地域(人口約一〇万人)は、冬は積雪や寒さが厳しく、農作業や屋外の運動はできません。そのため、冬季に血糖コントロールを悪化させる人が多くいます。
多職種がかかわる
〇七年七月、糖尿病患者の「QOLの維持」と「合併症の防止」などを目的に、病院の多職種が参加し「チームダイアベテス」を結成しました。当歯科からは歯科医師と歯科衛生士が加わりました。将来は地域連携パスの作成・運用をめざしています。
チームは、月一回ミーティングを行い、三カ月ごとにニュースを発行、地域開業医との定期学習会(二カ月に一回)や公開パス大会などに参加しています。
〇八年、糖尿病専門外来受診者のアンケートを実施しました。その際二カ月、待合室にブースを設置し、歯科検診と聴き取りを実施。また、待合室では学習ビデオやDVDを流しました。
検診受診者の八割が要治療
ブースでは、歯科受診中でない患者を対象に、問診と口腔内診査・撮影、歯科相談を行いました。 問診項目は「口の中で気になること」「硬いものが食べにくいか?」「最後の歯科受診は?」「現在のグリコヘモグロビンAlcの値」「糖尿病の罹患期間」で す。また、残存歯数・口腔内のプラーク量・虫歯の本数・歯周病の程度・歯科受診の必要の有無をチェックしました。
待合室の一角に位相差顕微鏡、口腔内カメラ「Gカム」を用意。「Gカム」で口腔内を撮影し、プリントして検診結果とともに渡し、喜ばれました。
二カ月間の受診者数は八六人で、対象患者の約一割でした(歯科受診中や無歯顎が多数だったため)。
その半数以上に「気になること」がありました。内容は歯肉からの出血や口臭、口腔内乾燥、歯肉のただれ、義歯の不具合などでした。「一年以内に歯科受診した」人が多数の一方、「二〇年以上ない」も数人いました。
グリコヘモグロビンAlcの値と残存歯の相関は不明でした。またコントロール不良(グリコヘモグロビンAlc八・〇以上)の二〇人に、二〇歯以上ある人 が一三人(六五%)という結果は予想より良好でした。受診者の八四%が要治療でした。
患者の「意識づくり」大切
今後の課題は、この結果を生かし、患者教育プログラムをつくることと、個人のフォローです。
糖尿病があると歯周病は進行しやすく、適切な治療とメンテナンスが重要です。また、糖尿病があると歯科治療を断られるケースもあるので、血糖のコント ロールが良ければ治療が可能なことを伝え、定期的な歯科受診を働きかける必要があります。
歯周病を治療したらグリコヘモグロビンAlc値が改善したという報告もあり、患者自身の意識を高めることや、歯科衛生士としての力量を高めることも必要と感じました。
チームでは、さまざまな角度から患者をサポートしたいと考え、今後は禁煙やフットケアなどのブースを設置する予定です。
(民医連新聞 第1450号 2009年4月20日)