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民医連新聞

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駆け歩きレポート(31) 解雇されたブラジル人など支援 長野・上伊那医療生協SOSネット 外国人も同じ住民 「食料・住宅・仕事を」

 長野県・上伊那(かみいな)地域。電子機器部品など製造業が主要産業です。そこで働いていた外国人がいま派遣切りに遭い困窮しています。上伊那医療生協は、国籍に関係なく困難な人を支援しようと「上伊那医療生協SOSネットワーク」を立ち上げ、奮闘中です。
(佐久功記者)

 三月七日午後。上伊那医療生協の本部前には長蛇の列。物資支援が始まるのです。家族連れのブラジル人などが並び、誘導や受付、物資を袋詰めするボランティアにも多くのブラジル人がいます。
 家族の数や失業保険の受給状況を記した登録票を見て、話を聞きながら、渡す物や量を決めます。物資は米、野菜、卵、オムツなど多種。七〇家族が訪れ、二人のSWも相談に奮闘しました。

●「食物ない」「金ない」

 きっかけは、昨年暮れのまちかど健康チェックです。ブラジル人から「派遣切りされ、収入がなく困っている人が多い。すでに半数は帰国した」と聞いたのです。
 一月下旬、組合員の三井芳美さんが、伊那市役所の通訳の新垣(あらがき)タミエさん(日系二世)を医療生協本部に連れて来ました。「毎日、ブラジル人数 十人から相談を受けている。家を失った、水道代や給食費が払えない、三日間食べてないなど、対応しきれない…」。
 「相談と生活物資の緊急支援を」と一月末、生協理事会はSOSネット立ち上げを決めました。

●外国人を真っ先に解雇

 「月収は一〇万円」。県営住宅に住む四〇代ブラジル人男性を訪ねました。来日一一年の派遣社員です。生産調整で出勤日が減らされ妻はリストラ、子は二人です。男性は昨年、仕事中に倒れ、緊急手術、入院。一二時間超の重労働を続け、胃に穴が開いたのです。
 入院費の未払いが一八万円。月二万円余の国保料も払えず、役所に相談。いまは月五〇〇〇円だけ納めています。SOSネットの食料支援は受けていません。「もっと苦しい人がいるから…」。
 同地域にブラジル人は、推定五〇〇〇人以上。来日一〇年以上の人も多く、家族を持ち、税金を納め、日本人と変わらない生活でした。
 ところが、外国人は真っ先に解雇されました。その数を役所も把握できず、手を差しのべる人もなく、孤立しました。日本語は話せても漢字が読めない人が多 く、役所でも十分説明されず書類も書けず、生活保護も難しく、ハローワークも紹介を渋ります。相場より高い家賃、不利なローンを組まされるなど悪徳業者や 派遣会社の喰い物にされ、「解雇前月の給料から水道代やガス代が計八万円も天引き。雇用保険料がいきなり三万円引かれ、手取りは六万円」という人もいまし た。
 子どもたちも深刻です。給食費が払えず学校に行けない、ランドセルが買えず入学をあきらめた、ご飯がまともに食べられない…。
 組合員や職員は、支援して初めて実態を知りました。

●国籍超え手をとりあう

 SOSネットワークは、あらゆるつてを頼り支援を呼びかけました。職員や組合員をはじめ、山谷 (やま)農場や県外からも食料が届き、仕事や住まいの紹介も現れました。理事の中には地方議員もおり、各議会で取り上げ、役所に働きかけました。通訳も臨 時に一人雇い、ブラジル人同士のつながりから、支援の対象が広がってきました。
 SOSネットワーク事務局長の水野耕介さん(同医療生協組織部長)は生協の緊急集会で訴えました。「集まった物資は、ほぼ尽きた。米二トン、ジャガイモ 一トンを配ったが、今後の見通しは厳しい」。国や行政の対応が必要です。「日本人も外国人も、困っていれば、助け合いたい。食料、仕事、住まいを支援して ほしい。緊急事態です」と水野さん。厳しさに希望が交じるとりくみが続いています。

【カンパの振込先】
アルプス中央信用金庫 箕輪支店
普通 7142290
名義:SOSネットワーク事務局水野耕介
【食料の郵送先】
長野県上伊那郡箕輪町中箕輪11324
上伊那医療生協組合員センター

(民医連新聞 第1449号 2009年4月6日)