フォーカス 私たちの実践 「ノムダス3」で排泄ケア 老健まくはりの郷(千葉) お尻サラサラ、コストも減少 個人に合わせたケアに自信
高齢者の介護で、排泄ケアは大きな位置を占めます。千葉・まくはりの郷では「ノムダス3」を使って排泄リズムを把握、個人にあったケアでオムツからの脱却を図っています。第九回看護介護活動研究交流集会で、介護福祉士の柴野真奈美さんが報告しました。
食事や排泄パターンつかむ
当施設では排泄ケアを見直しました。以前の検討から数年が経ち、オムツのコストが増え、利用者にとってもオムツの過剰使用による皮膚トラブルや不快感が問題になっていたからです。
まず研修会に参加し「ノムダス3」の実践方法を習得しました。これは「排泄研究会(代表・田中とも江氏)」の個人の排泄パターンにもとづくケア法です。
最初に三日間連続で、二時間おきに排泄・食事・水分摂取量をチェックします。(1)「ノムシート」に飲水量・種類・食事量を記入し、(2)「ダスシート」に尿量・便の形状・排泄場所を記入します。
(3)その記録をもとにカンファレンスを行い、排泄ケアシートを作成します。基本的ケア項目(起きる・食べる・排泄・清潔・アクティビティ)に関して目 標とプランを導き出します。そして実践、評価、実践とくり返します。
実施にあたって職員の勉強会を開き、対象の利用者七人を選びました。実践する中で、オムツの重ね使用だった人は一枚に、リハビリパンツだった人は布パン ツになるなど全員に改善がみられました。特徴的な事例を紹介します。
失敗の情報も検討
Aさん(八〇代・女性)は当初、日中はリハビリ用パンツと尿パッド(八〇〇mリットル用)を使 用、トイレ誘導をしていました。夜間はオムツに尿パッド(一〇〇〇mリットル用)を使用。尿意・便意はあり、夜間の失禁量も少量でした。食事は常食で三分 の二ほどを摂取。お茶は好みません。
「ノムダス3」で検討し、昼夜とも布パンツと尿パッドに変更しました。すると数日後の朝、大失禁してしまいました。スタッフ間では、意見が二つに分かれ ました。「失禁を本人がとても気にしている。オムツのままでいいのでは?」という意見と「いつもお尻が湿っている。布パンツでお尻がサラサラしている方が 快適では?」というものでした。
そこで次のカンファレンスで話し合い、就寝前に二回トイレに誘導し、夜間の排尿量を減らし、ナースコールでトイレ介助することにしました。またAさん は、排便が三日ない場合、下剤を服用するため、朝方、トイレに間に合わず失禁することがありました。対策として下剤を減らし、日中の排便を促しました。食 事も残さない量に変更、水分はリンゴジュースなど好みに合わせて提供しました。
Aさんは、いまではトイレを使用でき、排便時に清拭介助をするだけになりました。昼夜ともに失禁はありません。大容量だったパッドも軽失禁用に変え、お尻は常にサラサラです。
ケア全体が向上
このように「ノムダス3」によって排泄パターンをつかみ、排泄ケアを通して生活の全体、食事や離床、アクティビティなど個別ケアを考えることができました。
オムツ交換からトイレ誘導へケアが変化し、オムツからリハビリ用パンツへ、布パンツ使用へ替わると、利用者の不快感は減り、コストの削減にもなりました。
オムツを着けていた人がトイレで排便できるようになると、かかわるスタッフも変わってきます。成功体験が日々のケアを変え、ケア全体を良くするためと思 えます。いままで「漏れると利用者は不快」と考え、何重にもオムツを着けていましたが、逆に不快感を与えていたことにも気づきました。現在はオムツの種類 を再検討し、他施設へ見学に行き、スウェーデンの製品を導入しました。
今後も、利用者の快適さを追求し、個別ケアの継続、アクティビティの充実をめざしていきます。
(民医連新聞 第1449号 2009年4月6日)