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民医連新聞

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第4回 医療安全交流集会ひらく 医療事故を防ぐカギ 医師の参加、よいコミュニケーション

 医療の安全は、民医連でも重要課題の一つとして、八〇年代からヒヤリハット報告運動などを続けています。〇三年には「第一回・医 療安全交流集会」を開き、「医療事故は個人のミスではなく、組織事故」と位置づけ、トップ管理者を先頭に医療安全にとりくもうと呼びかけました。三月七~ 八日、四回目になる医療安全交流集会を大阪で開きました。医師や看護師、リスクマネジャーなど三〇〇人が集まり、安全文化をさらに醸成させようと討論しま した。
(横山健記者/村田洋一記者)

共感を表すことが重要

 今集会の目的は、(1)全国の情勢を知り、到達点と課題を共有する、(2)すべての事業所で安全管理体制を確立する、(3)とくに医師集団の積極的参加を呼びかけることでした。記念講演やシンポジウム、四つのセッションを通じて、考え方や具体的な安全対策を考えました。
 記念講演は、東京大学特任准教授の埴岡(はにおか)健一さん。ハーバード大学病院などが作成した「真実説明・謝罪指針」を翻訳し、普及に努めています。また、全国社会保険協会連合会と協力し、冊子にまとめました。
 講演では「医療過誤が起きた時、真実を説明し謝罪すれば、多くは訴訟にまではならない。医療過誤か不明な段階でも『予定通りいかず、ごめんね』という痛 みに共感を表す(共感謝罪)ことが重要。『患者に気づかれなかった』『裁判で負けなかった』ではなく、管理者が率先して真実説明の指針をつくり、患者中心 の医療を」と話しました。
 また医療過誤は、個人のミスではなく、システムの問題であり、過誤に関与した当事者の精神的なケアの重要性も訴えました。
 続くシンポジウムは「安全文化のさらなる醸成へ医師集団の積極的参加をめざして」がテーマ(別項)。
 二日目は、(1)「注射事故予防」、(2)「九〇分で行う事例分析」、(3)「事業所の医療安全委員会活動」、(4)「危機管理・法的視点」の四つのセッションを行いました。
 第一セッションでは、二つの注射事故の事例をもとに原因と解決策について検討し、注射業務の流れや薬剤の見直しを話し合いました。
 第二セッションでは、日本ヒューマンファクター研究所の木原康彦さんを講師に事例分析の手法を学びました。その後、与えられた事例をグループで分析し、発表しました。
 第三セッションでは、甲府共立病院と埼玉協同病院が医療安全委員会のとりくみを発表。医療安全委員会の活性化をテーマにグループごとにKJ法で改善策をまとめました。
 第四セッションでは、四事例をもとに対応のあり方や職員間のコミュニケーションを検討しました。また顧問弁護士から、法的に注意すべき点のアドバイスを受けました。

医師集団の積極的な参加をうながそう

 シンポでは四人のパネラーが、医師の積極的な参加で医療安全を前進させたとりくみを紹介しました。

医師は「目と構え」を

 大阪の耳原総合病院・田端志郎医師(医療安全管理室長)は、医師インシデント報告率を高めると りくみを報告。医療安全責任者の業務を保障、電子カルテで報告できるようにし、月一回の医局会議でカンファレンスを位置づけた結果、医師のインシデント報 告率が二~三%から一〇%近くまで上がりました。
 田端医師は「いまは、医療安全に対する『目と構え』を医師集団に身につけてもらうこと。医師たちの何気ない会話の中でも『それ、報告して』と口グセのように言い続けて、意識づけています」と語りました。

症例検討の重要性

 熊本・くわみず病院の大石史弘院長は、死因特定があいまいで訴訟にいたった事例を紹介。痛恨の経験から、「死亡症例検討会」を実施。診断や治療方針、延命措置の是非が妥当だったかを検証することの重要性を訴えました。
 大石院長は「治療や説明には信頼関係が基礎になる。患者に伝わっているか、パターン化していないかを見直すことが必要」と話しました。

開き方に工夫を

 青森・健生病院・医療安全管理者の泉谷信子さん(看護師)は「コミュニケーション不足が医療事故につながる」と指摘しました。
 医師の「ラシックス二〇、二アンプル」と口頭指示に、看護師は「ラシックス、二二アンプルですか?」と、聞き返しましたが医師は「そうだ」と答えました。
 泉谷さんがその場に居合わせことなきを得ました。「声に出せばどちらも同じで、医療事故につながるケース。看護師は、医師の指示がおかしいと思っても言えないこともある」と現場の状況を語りました。
 この場合や「サクシン」「サクシゾン」のような聞き間違いが多い場合、オウム返しではなく、効用を加え「筋弛緩剤のサクシンですか?」などと聞くよう指導しています。
 また、インシデント報告を出した医師に結果を必ず報告。「出すことが職場の医療安全につながると意識させている」と報告しました。

病院全体で安全文化を

 自治医科大学・医療安全対策部の長谷川剛教授は「非協力的な医師がいる場合、どのように病院全体で安全文化をつくるか」を語りました。
 非協力的な医師に「病院で医療安全にとりくむ意味」を理論的に説明しようと話しました。「医学雑誌で、医療安全に関する実証的なデータを示すこと。医師 の手術が完璧でも、患者間違いや検査データが古いなどのミスがあれば、患者は守れない。だから医師が先頭に立って医療安全をつくろう、と訴えよう」と、医 師をやる気にさせる方法を提案。

*  *

 その後、フロアから「インシデント報告を書く基準は?」「先輩医師のミスを後輩医師は指摘しづ らい」という質問に、長谷川教授は「手術なら、予定より出血量が多い場合は報告するなど、基準を決めておけば、書きやすいし、指摘しやすい。医療は、一度 のミスが命に直結する。『あの先生は怖くて言えない』では患者の命は守れない。病院全体のコミュニケーションを円滑にして、ミスを指摘し合える文化をつく ろう」と参加者に訴えました。

予防可能な有害事象の情報を伝える
必須な4つのステップ

Step1:起こったことを患者・家族に話す
Step2:組織として対応する
Step3:過誤が明らかな場合には謝罪を行う
Step4:有害事象防止のために、何が必要かを説明する

(民医連新聞 第1449号 2009年4月6日)