国が医師研修“見直し案” これでは医療崩壊とまらない 3・27 ドクターウエーブ 厚生労働省に“撤回”求める
政府は「医師不足の原因は新医師臨床研修制度だ」と決めつけ、当事者の意見も聞かず「見直し案」を提示しました(「今後の臨床研 修制度の概要について(案)」三月二日付)。パブリックコメント(意見公募)の期限が四月一七日という性急さです。全日本民医連は「医師研修制度を壊すも の」と大反対し、コメントの集中など早急な運動を呼びかけました。二七日、「医師・看護師・介護士ふやせ」三ウエーブ省庁交渉でも中止を強く要請しまし た。
実績ある中小病院を外すのか?
大きな問題の一つが、臨床研修病院の指定基準を「年間入院患者数(新規)が三〇〇〇人以上」に制限するもの。中小病院を排除し、大学病院に労働力を確保するための案が突然浮上しました。
厚生労働省との交渉で、増田剛医師(医師部員・ドクターウエーブ事務局長)は「多様な患者が来る中小病院での研修は、高度医療や専門医療に偏る大学病院 に勝る成果を上げている」と強調。また「研修医一人あたりの入院患者数は、むしろ大学病院の方が少ない」と数値を示しました。
中小病院で研修中の医師も発言しました。大廻あゆみ医師(鳥取)は「急性期から二次救急、慢性期、在宅医療まで学べ、地域医療をささえたいという気持ち を強くした」。藤田悟志医師(愛媛)は「大学病院と比べ、研修医個人に合った研修を受けられる」、徳重枝里子医師(宮崎)は「二年間で経験すべき疾患・病 態・手技はすべてでき、幅広い疾患の診断能力を身につけられた。外来研修や地域に密着しプライマリーを重視した研修ができていると自信をもって言える」と のべ、再考を求めました。
駆けつけた院長や指導医十数人も「地域病院での研修が地域医療をささえている」と訴えました。
都道府県ごとに制限枠
都道府県ごとに「募集定員の上限」を設けることも大問題です。 東京・神奈川・京都・大阪・福岡では実績数より削減。また、病院の募集定員が「過去三年間の実績の最大値まで」に制限されるため、二四道県で定員減に。
福岡・大手町病院の西中徳治院長は「北九州市では民間病院が救急を多数受け入れており、研修医も勉強しながら貢献している。県が削減対象にされるのは地域の実態に合わない」と発言。
「京都では医療対策協議会が全員一致で『見直し』に反対した。北部の医療崩壊が加速してしまう」などの批判が出ました。
実質「研修一年化」に道
研修プログラムを弾力化し、実質一年に短縮化できることも重大な問題です。「外科、小児科、産婦科、精神科研修を軽視するもの」「乱暴なやりかた」など中止を求めました。
自治体病院も反対
翌日の「ストップ医療・介護崩壊、増やせ社会保障費3・28シンポジウム」では、全国自治体病院協議会会長の邉見(へんみ)公雄さんも反対を表明。「私は逆に、一年にして何が良くなるのか? と霞が関に問いたい」と発言しました。
また「医師数を抑制する閣議決定は、医師を一人養成するのに当時五〇〇〇万~七〇〇〇万円かかり、一人増えると医療費が年に一億円増えるから、が理由 だった」とのべ、医療費抑制政策を批判しました。同協議会は反対を機関決定し、会員がパブリックコメントを出すことにしています。
病院・医師・医学生に知らせ
急ぎパブコメ集中を
全日本民医連は、「見直し案」に対し、全病院・医局から緊急にパブリックコメントを集中的に出すよう呼びかけています。
また、各県の臨研病院、大学病院、病院団体、県当局を訪問し、懇談して問題点と民医連の見解を伝えようと提起しました。いちばん影響を受ける医学生や奨 学生にも、この重大性を知らせるためにチラシも作りました。マスコミや世論に働きかけようとも提起しています。
パブリックコメント(〆切4/17)
メール:kensyu@mhlw.go.jp
(テキストファイルで添付)
FAX:03-3591-9072
郵送:〒100-8916
東京都千代田区霞ヶ関1-2-2
厚生労働省医政局医事課
医師臨床研修推進室
(民医連新聞 第1449号 2009年4月6日)