フォーカス 私たちの実践 糖尿病患者のフットケア指導 愛知・名南病院 「いつまでも自分の足で歩こう」 チェックシートやオーダーメード靴も活用
第九回看護介護活動研究交流集会で看護師の松崎政子さんが報告したフットケア指導の実際です。
当院では、糖尿病教育の中にフットケア指導を取り入れています。以前はパンフレットを使う指導 だけでしたが、〇六年にフットケア講師(西川みどりさん=当時大阪の耳原老松診療所)から指導を受けたことをきっかけに、直接足を見てケア指導をするよう になりました。始めてみると、足のトラブルを抱える患者、爪の変形や足白癬(せん)が多いことがわかりました。
いま、糖尿病患者を対象に週一回、実施しています。患者自身が足に興味を持てるよう、いっしょに「足チェックシート」に記入します。また、スタッフは交替で担当し、全員が技術を向上できるようにしています。
フットケア指導の実際
まず、用具は一般的な爪切りやニッパーのほかに、爪やすりも手動と電動のものを揃えました。
最初に足浴を一五分間施行し、その後ケアに入ります。爪白癬では、爪が厚くなり、表面に凹凸や変形があるので、ニッパーで爪を切り、電動やすりで肥厚し た爪の表面を削ります。その後、爪と皮膚の間の垢を除去し、保湿剤でマッサージします。一回のケアでは不十分ですが、何回かくり返すと、表面の凹凸や肥厚 の改善が見られます。
足白癬が疑われる患者には、積極的な検査を行っています。
糖尿病と心不全の患者の例を紹介します。真菌が陽性で、足底の皮膚が硬く、一部はがれ、乾燥と角化が著しく、趾間は湿潤し、足趾(ゆび)にチアノーゼが ありました。毎日のフットケア効果で、足底はきれいになり、足背にアンタップテープ(冠動脈拡張剤)を貼付し、チアノーゼはかなり改善しました。
残念ながら、この人は全身状態の悪化とともに足の状態も悪化してしまいました。全身状態不良な場合は、局所ケアの効果には限界があることも示しました。
合わない靴に問題が
足病変は靴を写す鏡です。合わない靴が原因で足にトラブルが生じたり、症状を悪化させるケース が多くあります。足のケアだけでなく原因への対策が必要です。そのため当院では、義肢装具士と連携し、オーダーメードシューズ製作を斡旋しています。リウ マチや外反拇趾(ぼし)などの方だけでなく、糖尿病性壊疽や難治性潰瘍の予防にも効果があり、すすめています。
右第一趾に一センチほどの潰瘍があった患者の例では、オーダーメードシューズでかなり改善しました。糖尿病とASO(閉塞性動脈硬化症)を併発し、その 部位は、ウオノメやタコで骨髄炎(こつずいえん)を起こし外科で治療を受けていた人です。
オーダーメードでは、問診、足底圧計測、採寸、足型採り、木型と足底板の作成、仮靴での修正など細かな工程を経て、一人ひとりに合わせて製作します。これによって足に負担をかけず病変の悪化を防ぐことができます。
足がきれいになる喜び
定期的なフットケアの回数を重ね、きれいになっていく足を見ると、患者は喜び、興味も感じてきます。スタッフもうれしく、爪ケア・角化ケアについての技術も向上してきました。
しかし、まだ課題があります。靴の状態や歩行の仕方の点検、筋力トレーニングなどの援助です。巻き爪への正しい処置の仕方、適切なインソールの選択、外反 母趾の対応の仕方、筋力トレーニングなどに関して知識を増やしていく必要もあります。
スタッフが統一したケアができるよう学習し、義肢装具士にはオーダーメードシューズの評価も正しく伝え、チーム医療をすすめ、患者のセルフケアも支援していきたいと思います。
(民医連新聞 第1448号 2009年3月16日)