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民医連新聞

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路上や車中生活からの脱出を支援 月1回のパトロールから10人余が生活保護に 三島共立病院 共立クリニック 静岡 

 東部パトロールの会(東(とう)パトの会)は、静岡県東部の三島・沼津地域で路上生活者を支援するボランティア団体です。佐藤永 (はるか)さん(三島共立病院・SW、四年目)や鈴木弘二さん(共立クリニック事務長)が地域に呼びかけ、結成しました。生活保護の申請やアパートの確保 などを支援し、路上生活から抜け出した人は、一〇人を超えます。一月二七日のパトロールに同行しました。(佐久 功記者)

 「こんばんは。三島共立病院の佐藤です」。浜辺に止めた車中で暮らす五〇代のAさん(男性)に声をかけました。「青森から出てきた。仕事がなくて…」と話すAさんに「よかったら食べて」と、おにぎりやツナ缶を差し入れました。
 「あと二カ月はがんばれる」と言うAさんに鈴木さんは「生保申請やアパート探しの手伝いをするから、いつでも電話して。来月も来るから」と、連絡先を載せた「路上通信」とテレホンカードを渡しました。

民医連外の人とともに

 〇七年の秋、路上生活の女性が救急車から浜松市役所前で降ろされ、出てきた市職員は見ているだけで結局、女性は死亡。同院でも路上生活だった人が生活保護になったけれど退院後にアパートで孤独死。これらの痛ましい事件が佐藤さんの心に引っかかっていました。
 「静岡東部でも支援活動をやりたい」と佐藤さんは、鈴木さんに相談。まず静岡市のパトロールに同行、支援者の「まず始めてみて。何より顔を覚えてもらう ことが大事」の言葉に背中を押されました。民医連内外に呼びかけ、〇八年七月からパトロールを始めました。
 いま「東パトの会」には、職員や友の会員、司法書士、市会議員、県職員、住職など、多くの人が参加しています。月一回、三島・沼津市内の三カ所をパトロールしています。
 夜、ことぶき薬局の二階に集まって打ち合わせ、おにぎりなどを用意し、三チームで出かけます。
 「数カ月前まで路上生活者だった人」も参加しています。東パトの会の支援で今は生活保護です。「その経験を生かして協力してほしい」と頼まれ、「こんな自分で役に立つなら」と応じたのです。

孤独な路上生活

 パトロールの翌日、佐藤さんは昨夜出会った五〇代のBさん(男性)と生活保護申請に向かいまし た。申請は受理されましたが、Bさんは「あそこまで細かく聞かれるのか?」と、少し疲れた様子でした。その足で地元の不動産屋に。途中、業務に戻る佐藤さ んの代わりに若い司法書士が付き添い、下見にも行きました。
 会の活動を鈴木さんは「アパートにも定期的に訪問している。彼らは一度、人間関係が断ち切られているから孤独。だからお酒に走る人も多く、孤独死した人 もそうだった。生活の相談などを続けることが必要」。今後は、ネットカフェに寝泊まりしている若い人の支援も計画しています。

青年職員が成長する

 活動には佐藤さんなど、青年職員が元気に出てきます。事務の茅野真理子さん(共立クリニック) は、派遣職員として二年働き、現在は非常勤職員として一年目です。当初、鈴木さんは「若い女性はやりたがらないだろう」と声はかけませんでした。ところが 茅野さんは「自分から参加したいと事務長に言いました。活動は楽しい」と話しています。
 「車中生活の人に『隣の車の人が生活保護とれたよ』と伝えると『俺ももう一度がんばって、やり直したい。生活保護を申請したい』と言ってくれた時は、 やってきて良かったと感じました」と茅野さん。年始に鈴木さんを「心配だからおにぎりを持って会いに行きましょう」と誘いにくるほど熱心です。
 鈴木さんは「この活動は、若い職員の成長につながっています。青年は体験して成長するんですね。生活保護申請にも同行してもらっています」と語りまし た。また生活保護法など、出発前の学習が青年職員の力になっています。
 矢部洋院長は「若い職員のがんばりが、中堅やベテランにいい刺激を与えている。民医連外とのつながりができたことも画期的なこと」。同院の法人である健生会は、無料低額診療事業の届け出を準備中です。
 佐藤さんは「路上生活をする人には、いろいろな事情を抱え、生活保護を申請しない人もいる。そんな人たちから困った時に頼りにされる関係を築き、活動を 続けたい」と語ります。「医療関係者がかかわってくれて非常に心強い」と支援者も喜んでいます。
 鈴木さんは「静岡では、浜松の事件後に出た県の通知もあり、住居がなくても申請は受理されます。しかし一人では追い返される状況は続いており、ぜひなくしたい」と語りました。

(民医連新聞 第1446号 2009年2月16日)