9条は宝 私の発言 〈44〉 演じて 観て 感じたい 憲法ミュージカルはいかが
小林善亮(よしあき)さん(弁護士)
1974年、埼玉県生まれ。三多摩法律事務所に所属。健生会(東京)の顧問弁護士
「憲法ミュージカル」に燃える弁護士たちがいます。一〇〇人の弁護士が呼びかけ、出演者は市民から公募、〇七年「キジムナー」、〇八年「ロラ・マシン物語」を成功させ、今年も秋の上演に向け準備中です。東京の実行委員会事務局長は、若手弁護士のこの人。
「ロラ・マシン物語」は、従軍慰安婦にされたフィリピン女性の話です。大阪、東京、山梨の公演で、のべ一万六〇〇〇人が観てくれました。
三地域の出演者約三〇〇人は、みな普通の人。労働者や主婦、学生、車イスの人もいます。夜や休日に集まり歌や踊りを練習します。出演者の変化も魅力で す。物語の背景なども学びますが、それ以上に、演じることで身体で学ぶんですね。
「憲法」と聞いて「健保?」と言った人や、サッカー青年。彼らが兵隊を演じながら「軍隊とはなにか」と考える。「従軍慰安婦はいなかった」と思っていた 人が慰安婦の父を演じる中で、意見を変える。出演者自身にさまざまなドラマがあり、人権感覚とか歴史観を鍛えたのだと思います。
憲法をリアルに感じて
出演者みんなが大切なメンバーで、一人ひとりを尊重する舞台も魅力です。いじめに悩んでいた子、困難を抱えた子が、舞台では光り輝いていました。これも「憲法的」だと思います。それを地域の人たちが観に来てくれるのですから、うれしいです。
私は弁護士として、横田基地の騒音被害訴訟や、都立七生(ななお)養護学校の教育裁判に関わっています。どちらも人権に関わる重大問題です。でも当事者 でなければ、「遠くの出来事」に思われがち。自分の身に降りかかれば、憲法一三条がいう「幸福追求権」が満たされないと気づくはずなのですが…。
憲法九条の学習会も同じ顔ぶれで、若い世代が少ない。「これでいいのか。もっと憲法をリアルに感じられないか」と考えていました。
弁護士仲間と話し合って、思いついたのが「憲法ミュージカル」でした。埼玉で始まり、二〇〇一年まで一〇年続き、山梨では〇五~六年にありました。実家 が埼玉なので知っていました。そこで「自分たちもやりたい」と、山梨を手がけた脚本・演出家の田中暢(のぼる)さんを紹介してもらいました。
そして〇七年、私たちが東京・多摩地区で実施、それを観た大阪の弁護士が「うちでも」と広がってきました。
希望を歌に
今年のテーマは環境と人権、諫早湾の干潟(ひがた)が舞台です。「水門を開けろ」のたたかい、 ムツゴロウや渡り鳥、ひび割れた干潟。田中さんは「漁業が中止になり、陸で苛酷な労働に従事する漁民の姿を描きたい」と。わずかな補償金しかなく、トラッ ク運転手になった人は、トラック・ターミナルの施設も正会員でないため利用できない。まさにワーキング・プアです。田中さんは取材し、漁民と膝をつき合わ せて話し合って構想を練りました。「水門が開いたら、漁民に戻れるという希望を歌い上げたい」と語っています。
実行委員会では「ピュアな笑いや明るさも出そう」と話し合っています。ぜひサポーターになって、観に来てください。
公演サポーター募集 ▼会費は1口3500円 |
(民医連新聞 第1444号 2009年1月19日)