輝く民医連の看護・介護 傾聴ボランティアの訪問で不安軽く楽しい時間を 愛知・富木島(ふきしま)診療所 登坂(とさか)昭子(看護師)
愛子さん(仮名)は、進行性筋ジストロフィーという神経難病です。日々、死への不安を抱えながら、自宅で療養生活を送っています。「何かあったら?」、一人でいると不安はとくに強くなります。
愛子さんは、〇六年に六五歳を迎えて介護保険の対象となり、身体障害者の支援サービスから介護保険制度の居宅サービスへと移行。そのために、愛子さんは 困難に直面しました。「同居家族がいる」という理由で、ホームヘルパーの生活援助を制限されたのです。
死への不安がある愛子さんにとって、生活援助は精神面のささえでした。それが制限され、精神的な不安を増大させました。
組合員さんの力を借りて
愛子さんの不安を軽減するにはどうしたらいいか。ケアマネの私は、いろいろ探ってみた結果、「傾聴ボランティア」にたどり着きました。
人は誰でも、誰かに聞いてもらえることを必要としています。まして孤独で病気のとき、老いや死に直面しているときなどは、思いに耳を傾け、共感してくれ る人を特に必要とします。入院患者やお年寄り、障害を抱えて生きている人などを訪問して、思いや言葉に耳を傾け、共感するのが、傾聴ボランティアです。愛 子さんにも、役立つと思いました。
そこで、活発にボランティアなどをしている二人の組合員さんに、傾聴ボランティアを引き受けてもらえないかと相談。「私たちにできるかしら?」と不安げ でしたが、愛子さんの人柄や趣味などを話し、「いっしょに手芸などしていただけると喜ばれますよ」と働きかけました。
「二人ならなんとかなるかしら」と了解してもらい、いっしょに愛子さんの家を訪問しました。顔合わせはうまくいき、傾聴ボランティアが始まりました。
有意義に過ごす時間ができた
訪問は現在月二回。一時間から一時間半、話を聞いたり折り紙で小物を作ったりしていっしょに過 ごしています。いまでは愛子さんは訪問を楽しみにし、有意義な時間と感じているようです。訪問している組合員さんも、「愛子さんはもちろん、私たち自身も お互いが作品作りに熱中し、時間が経つのも忘れてしまう」と楽しそうに語りました。愛子さんの不安は軽くなったようです。
誰もが安心して住み続けられる町づくりの一つとして、私たちは今後、傾聴ボランティア活動を大きく展開していきたいと思っています。また、医療・介護の 崩壊を許さない運動を、みなさんと共同して、とりくんでいきたいです。
(民医連新聞 第1443号 2009年1月5日)