輝く民医連の看護・介護 あきらめない看護・介護で認知症患者さんと信頼関係できる 三重・津生協病院 近澤佳央(介護福祉士)
私たちの療養病棟では〇七年夏に、徘徊をともなう認知症の患者さんを三人同時に受け入れることになりました。
当初、三者三様の行動をとる患者さんに職員は完全に振り回される状態でした。
三人とも大腿骨頸部骨折術後で安静が必要なのに「痛い、痛い」といいながらも歩いてしまい、転倒のリスクと問題行動でヒヤリとすることばかりでした。
連鎖反応で症状が増幅
さらに三人が集まると相乗作用か連鎖反応か、それぞれの認知症の症状が増幅されます。そのため にマンツーマンで患者さんに職員がつきっきりで対応しなければなりません。他の業務がまったくすすまない状態になりました。そうかと思うと、三人はお互い を世話しようとしてケンカになります。会話がヒートアップしてさらに混乱するという状況でした。
恐怖の時間帯の克服
職員が二人の夜勤帯では困難をきわめました。どちらかの仮眠時間は一人で対応しなければなりません。それで夜勤が憂うつ、恐怖になってしまいました。
混乱と恐怖の中でカンファレンスをもちました。意見を出し合い冷静になって見守ることを中心にすえました。改善策のヒントになったのは「徘徊と思っても トイレに誘導すると落ち着いて寝付くこともあった」「富さん(仮名)は片付け上手なので、日中にコップ洗いやおしぼりタオルづくりをしてもらったら、比較 的夜間の睡眠がとれたようだ」「目が離せないけれど、介護者が付き添っていっしょに行動することで患者さんは落ち着いた」などの意見でした。
抑制ではなく見守るケア
そうして、あきらめず患者さんとの信頼関係をつくっていくと三人とも、だんだんと落ちつきはじ めました。しかし、一方では業務が大幅に遅れていきます。そのための対応も行い、夕食時には「残り番体制」をつくったり、師長に患者さんを受け持っても らったり、できることは何でもやりました。
私たちは当初から、たいへんではあっても、患者さんを抑制することは考えませんでした。見守ることを中心にしたケアを苦しいなかでも意思統一してすすめました。
三人にかかわる中で私たち自身が認知症の患者さんの対応をあらためて考えました。医療者の都合だけで見たり考えたりするのではなく、患者さん本人の視点 からものを見ていくことが大切なのです。認知症高齢患者をひとくくりにすることなく、個別に対応していくこと、その方法を実践で学ぶことができました。
(民医連新聞 第1443号 2009年1月5日)