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民医連新聞

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患者訪問で知った“過酷な現実”社会保障と民医連の役割学ぶ 『社保テキスト』「綱領」 学習運動つづける 岡山民医連

 岡山民医連は『明日をひらく社会保障』(社保テキスト)の学習運動を、昨年一一月から続けてきました。またその運動の一環で、国 保や後期高齢者の「気になる患者」を訪問。その中で深刻な事例にも出会いました。運動のまとめ集会では、民医連の新綱領草案を学習し、「困難がなぜ起こる のか」「私たちの役割は何か」を考えました。(佐久 功記者)

 「実は、入院をキャンセルしたんじゃ。自分は大腸がんのような気がする。けど、もう入院はせ ず、ここでこのまま死のうと思うんじゃ…」。訪問調査の時の木村美代さん(86)の言葉です。驚いた星昌子さん(林道倫精神科神経科病院)と横山万喜子さ ん(けやきメンタルクリニック)が事情を聞くと…。

 木村さんは、障害をもつ次女と同居。その次女は現在入院中で、その費用が毎月約七万円かかります。
 木村さんも夏から体調が悪く、他院に受診していました。そこで大腸ポリープが見つかり、入院をすすめられました。しかし、自分の国民年金と次女の障害基 礎年金を合わせた収入は月に約一五万円。どう計算しても自分の入院費のメドが立たないと言うのです。生活保護の相談にも行っていましたが、受給できません でした。
 星さんはすぐに、市や県、広域連合にも電話で相談。でも「制度だから、しかたがない」の一点張り。動きもしませんでした。
 その後、体調がどんどん悪くなった木村さん。見かねた星さんや妹さんが説得し、何とか入院を決意しました。入院費は妹さんが出すことになりました。

制度の犠牲者

 木村さんは、後期高齢者医療制度の問題点の一つ「高額療養費が国保の家族と合算できない」とい う弊害に直面しました。高額療養費は、国保なら一カ月にかかる医療費を世帯単位で合算、自己負担限度額を超えた分が戻ります。家族が国保と後期高齢者医療 制度に分断され、高額療養費の限度が別べつで、大きな負担になりました。
 木村さんは元看護師で、病院で働いていました。夫が若くして倒れてからは、自由がきく医院のパートになり、一家をささえました。七七歳まで働き、いまも娘の世話や家計のやりくりをしています。
 これまで保険料を一度も滞納せず納めてきた木村さん。初めて入院が必要になった時に、低い年金、高い保険料、それに加えて合算できない制度に阻まれました。

学びを確信と力に

 「社会保障の実態」を患者さんの姿からつかもうと職員は地域に出かけました。九月から二カ月間、中断患者や未収金などで「気になる患者さん」をピックアップして、六三件を訪問。その一例が木村さんでした。
 ほかにも多くの人が、困難に直面していました。短期証や資格書ではなくても、訪問すると「国保料を滞納している」「福祉事務所に生活保護の相談に行った」という人は、一人や二人ではありませんでした。
 訪問に先だって、岡山民医連は一年間、非常勤職員を含めた全職員の「社保テキスト」の読了をめざしてきました。職員自身が講師になって学習会をしたり、 少しずつ読み合わせるなど、職場ごとにさまざまに工夫。一〇月末までに約四割の九二〇人が修了しました。
 その総まとめの集会を一一月二二日に行いました。報告から明らかになったことは「予想以上の患者さんが、お金の問題で苦しんでいる」ことでした。「定期 受診している人も、本当は困っているかもしれない。よく聞かないと」。訪問した職員の実感です。
 まとめ集会の講演テーマは「新綱領草案」でした。その理由を岡山民医連事務局長の滝野教明さんはこう語りました。「学んだことを生かすためにも『民医連 とは』『何をめざすのか』をしっかり議論することが大切です。経営の困難などで先が見えにくい時だからこそです。今日の学習も理念に照らして、現実の矛盾 を考えることができ、職員の力と確信になったと思います」。

(民医連新聞 第1442号 2008年12月15日)