高齢者の権利かかげて(6) 障害者も苦しめる後期高齢者医療制度
六五~七四歳の障害者が後期高齢者医療制度に加入しないと医療費助成が受けられない県・道があります。
なくなった傷病手当
福岡県に住む六六歳の入院患者さん。ペースメーカーを付け、身障手帳一級、会社勤めをしながら 治療を続けています。春ごろ「後期高齢者医療に加入するかどうか」という手紙が来ましたが、わからないので放置していました。しばらくたって後期高齢者医 療被保険者証が送られてきて、健保と後期高齢者医療の二重加入になっていたことが判明。その間、給与からは健康保険料が差し引かれていました。
後期高齢者医療に移行しない場合、重度障害者医療の助成が受けられず、健保の三割の自己負担分を四月にさかのぼって支払わなければなりません。それでは 負担が重いので移行を選びましたが、健保本人なら請求できた傷病手当がなくなりました。
実質強制加入の裏に
福岡県のほか、愛知・富山・茨城・青森・山形・徳島各県と北海道も、六五~七四歳の障害者が後期高齢者医療制度に加入することを医療費助成の要件にしています。
障害者が七五歳にならないのに後期高齢者医療に加入させられると大きな不利益が生じます。(1)子どもの被扶養者だった人は、保険料を自分で払う、 (2)健保の本人だった障害者は傷病手当がなくなるほか、扶養家族も健保から抜け国保料を負担、(3)国保加入だった障害者では、国保の障害者「保険料減 免」が適用されない、などです。
にもかかわらず「強制加入」させる理由は、これらの県・道が「後期高齢者医療の方が助成する額が少なくてすむから」という指摘もあります。
「有料化やめよ」
福岡民医連は、障害者団体とも共同して、この事態をなくすよう県広域連合や県に対して働きかけてきました。
合わせて、福岡県が打ち出した「重度障害者医療の有料化(改悪)」をはね返す運動をすすめてきました。改悪案は、全額助成(無料)だった患者負担を、外 来一医療機関当たり月五〇〇円、入院一日当たり五〇〇円(上限一万円)にするもの。同県連は障害者施設五〇〇に署名依頼を郵送し、約五〇団体の返信を得ま した。個人署名二万九〇〇〇筆も集約しました。
九月二八日、県議会に「医療費助成の継続を求める請願」と「後期高齢者医療加入を医療費助成の要件から外すよう求める」要請書を提出。県は一〇月一日実 施に踏み切りましたが、障害者団体や自治体の反発が大きく、見直しを行う計画です。
同県連の北園敏光事務局次長は「自治体の姿勢が問われるが、そもそもの問題は政府の医療費抑制策から生じている。障害者に不利益を与え、混乱を大きくし ている後期高齢者医療制度は廃止することが一番だ」と語っています。
(民医連新聞 第1440号 2008年11月17日)
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