高齢者の権利かかげて(2) 年金天引きの「隠れ増税」 口座振替で取り戻せるが…
高齢者の怒りが収まらない後期高齢者医療制度。政府は「見直し」で批判をかわそうと躍起ですが、その一つとして出てきたのが、 「保険料を年金天引きではなく、口座振替も可能」とした対策です。ところが、その結果「天引き」には知らないうちに増税が組み込まれていたことが明らかに なり、「隠れ増税だ」と批判が上がっています。
政府は七月二五日、「一定の基準を満たせば、保険料支払いに口座振替も認める」という政令を出 しました。これは「申請すること」が前提で、(1)直近の過去二年間に保険料の滞納がないこと、(2)年金が一八〇万円未満であり、肩代わりできる配偶 者、世帯主がいること、が条件です。この(2)に「隠れ増税」が潜んでいました。
7000円の隠れ増税
高齢者夫婦の場合(夫の年金が二〇六万円以上、妻が一五八万円以下)。四月以前は、夫が妻の国民保険料をまとめて払っていたら、夫は所得から妻の分も社会保険料として控除することができました。
しかし、四月以降、夫婦がそれぞれの保険料を天引きされると控除を受けられず、約七〇〇〇円近い「実質的な増税」になります。
これは、子どもが世帯主である家庭(子どもが親である高齢者夫婦の国保料を払っていた)でも同じです。これまでなら、子ども(世帯主)が両親の保険料を 払うと、年度末の確定申告で社会保険料の控除を受けることができました。両親が年金天引きだと、子どもの増税額は二万円以上(収入による)になります。
見直しではなく廃止を
この「隠れ増税」をどれだけの高齢者世帯が知っているでしょうか? 厚生労働省は周知に努めず、広域連合や自治体任せにしています。強い批判を受けて、ようやく七月二九日に「増税になる世帯」の構成や所得などの試算を明らかにしました。
保険料天引きから口座振替にするには申請が必要であり、知らなければ「増税されたまま」になります。また手続きに時間がかかるうえに天引きが二カ月単位 であり、「八月上旬に申し込んでも一〇月か、それ以降になる」といいます。しかも実態として、子どもに扶養されていても高齢者自身が世帯主である場合は、 口座振替ができないなどの問題もあります。
年齢で医療制度を切り離すという、世界に類のない制度は、「一部見直し」で、ますます混乱し、問題が重なってきます。「早急に廃止」が一番の解決策です。
(民医連新聞 第1435号 2008年9月1日)
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