胃瘻なら大分健生病院 全国が注目 経腸栄養公開講座 地域連携と技術向上(スキルアップ)はかる
人口四六万の大分市。その中心に位置する大分健生病院(一三〇床)は、PEG(経皮内視鏡的胃ろう造設術)センターの設立や NST(栄養サポートチーム)の活動、公開講座の開催などを積極的に行い、地域で一目置かれる存在。「胃ろうなら健生病院」と言われるほどで、全国の患者 や医療従事者から、問い合わせが来ます。始まりは、勉強会を「自分たちだけではもったいない」と、地域の医療機関に呼びかけたことでした。(佐久 功記 者)
七月二〇日、「第五回・経腸栄養公開講座」が開催されました。これは、毎年大分健生病院が全国的に著名な講師を招き開いているものです。
この日の講師、松本雄三氏(内視鏡技師)は、亀田総合病院のPEGやNSTの責任者として活躍中です。PEGやNSTにおけるコメディカルの役割やチー ムの実践について講演。歯科衛生士が歯の掃除に努力した結果、創部感染率が低下したこと、管理栄養士が中心になって六段階の嚥下(えんげ)食をつくってい るなど、チームメンバーの働きが治療に役立っていると紹介しました。
二番目の合田(ごうだ)文則医師は、香川大学病院の腫瘍センター長として奮闘中です。胃ろうで使う半固形栄養剤について講演しました。四〇年前にカテー テル代わりに文具店で売っているチューブを使って胃ろうをつけた患者が、半固形であるお粥を注入し、元気にすごしてきた例を紹介。逆流しにくく消化しやす い、半固形こそ人間の体に合っていると解説しました。
自分たちだけではもったいない
最初の公開講座は二〇〇四年に開催。大分県では当時、積極的に胃ろうにとりくむ医療機関がなかったそうです。
そこで内視鏡室の佐藤雅子さん(内視鏡技師)たちは勉強のため、民医連の経腸栄養の第一人者である高橋美香子医師(山形・鶴岡協立病院)を呼ぶことにし ました。でも、自分たちだけではもったいない。そこで公開講座に。初めての経験でしたが、医療器具メーカーの手助けもあり、開催にこぎつけました。
当初一〇〇人と見込んでいましたが、一六〇人も参加。これは思った以上にみんな関心があると、翌年も開催。参加者が増え昨年は四〇〇人が参加、今年は二 三〇人参加し、大きな企画になっていきました。今後も続けていく予定です。
ふたたび食べる喜びを
この十数年、同院でもPEGが増え、それにともないカテーテル交換、ろう孔のただれや下痢など のトラブル対応が増えてきました。他院で胃ろうをつくった患者も増加。そこで二〇〇四年、地域連携やアフターケアなどを集中的に担う部署として、今里真副 院長(外科)を中心にPEGセンターを設けました。
設立後、内視鏡室のスタッフがチームで胃ろうの入院患者をラウンドし、ろう孔の評価やケアをしています。また、他院の胃ろう患者のカテーテル交換も積極的に受け入れています。
翌年、今里幸美医師(内科)が責任者となり、NSTが発足。最初の公開講座で講師から「PEGは、イコールNSTだ」と聞き準備してきたのです。「これ まではろう孔のケアを中心にしてきた」と言う佐藤さん。胃ろうのトラブルをなくすには、全身状態の把握も欠かせません。以降、PEGセンターとNSTの連 携が組まれました。
他院の患者ひきうけ
その後、言語聴覚士を採用し、嚥下の評価やリハを積極的に実施。胃ろう栄養やNST加入で栄養 状態も良くなり、嚥下機能が回復していきました。その結果、何人もの患者が再び口から食べられるようになりました。佐藤さんが「とりくんできて良かった」 と思えた瞬間でした。過去三年間の胃ろうのうち嚥下造影した五五例を調べると、胃ろうから完全に離脱した患者は一三%、部分的な経口摂取を含めると二七% もいました。胃ろうで一生を終えるのではなく、再び食べる喜びを味わうことができるのです。
地域連携もすすみ、他院患者のカテーテル交換が増加。全体の交換数は二〇〇三年の二〇件から、〇六年には十倍の二〇〇件にまで増えました。また常に三〇~四〇人の胃ろう患者が入院中です。
取材を通じて、「胃ろうに強い病院」という自分たちの特性をつちかい、地域に定着させ、力を発揮している姿がわかりました。地域の期待にこたえ、患者の立場に立ち日々努力する。これができるのが民医連らしさと感じました。
(民医連新聞 第1435号 2008年9月1日)
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