民医連 伝えよう つなげよう 看護 (10) 奈良民医連 「仲間がいるからがんばれる」奨学生の集団化めざし奮闘
奈良県では約三〇%が県外に就業、県外就業率は全国一位です。看護師も同様で、一四校の養成校でも、卒業生の三人に一人は県外に就職しています。 そのため看護師確保状況も厳しく、7対1取得病院はたったの五病院です。また二〇歳以上の看護学生の比率が近畿で一番高いのも特徴です。
当県連の看護奨学生数は、五六人。ここ数年、大幅に増加していますが、奨学生会議や諸活動に参加する学生が増えない状況が続きました。奨学生には三〇代 や子どものいる人も多く、活動に参加しにくい状況が考えられました。
そのため、本県の奨学生の実情とニーズを把握し、対策をとるため、昨年、看護奨学生を対象にアンケートを行いました。
社会人増え経済的に苦労
アンケート対象は、奨学生のうちレギュラーコースの五三人。回収率は九一%でした。
結果から見えたのは、三年前までの圧倒的な「現役・女子」が様変わりし、男子学生が二五%、社会人学生の割合も四〇%になっていました。
そのためか、看護学校や病院を選ぶ基準の背景に「経済的理由」などがあり、「実家から通える所」が多くみられました。奨学金の役割は「小遣い」から「学 費や生活費」が多く、現役学生の中でも「生計の足し」など、金銭的に深刻な状況がうかがえました。
学校生活の不安を聞くと「勉強や実習でバイトできなくなる」や「人間関係」を挙げる人が多く、精神的に追い詰められた状況が察せられました。既婚者や独 身者、年齢などで一人ひとりのニーズも違います。それぞれに応じた対応が求められると考えられました。
具体的に学生が活動に参加しやすい条件づくりを検討し、実施することにしました。
学生企画は、実行委員会でつくります。その会議の交通費や昼食代を保障し、安心して参加できる環境を整えました(高校生の受験対策講座にも補助しています)。
もう一つは、企画の効率化。午前に「奨学生会議」、午後から「学習会」と、一日で行うようにしています。
楽しい居場所づくり
アンケートから、奨学生の現状を理解する大切さにあらためて気づきました。改善の結果、活動に参加する学生が増えており、奨学生の集団化もでき始めています。
今後の課題は、奨学生集団がいっしょに活動する中で学年を越えたつながりをつくり、さらに新しい仲間を広げていくことです。
学生は、学校だけの人間関係や勉強ばかりの環境では「看護師をめざす」という目標にふんばりが効かなくなる時があります。そんな時、ささえになるのは奨学生仲間であり、看護担当者、先輩看護師です。
奨学生活動の中で、民医連の医療や看護にふれ、自分の看護観を構築し、民医連の理念を重ね合わせてもらいたい。「学校やバイトが忙しいから参加できな い」ではなく、「忙しいけど居場所があり、仲間もいて楽しい」。そんな奨学生活動をめざしています。
今後も「仲間がいて楽しい奈良民医連の奨学生活動」の輪を広げて、養成と確保の両方をつなげ民医連看護の後継者育成へとりくんで行きたいと思っています。(德永 桂、土庫(どんご)病院・事務)
(民医連新聞 第1432号 2008年7月21日)