後期高齢者医療制度 “戦中戦後生きぬいた私らだ 国の勝手は許さん” 怒りの声集める ◆――岐阜民医連
「後期」と差別された高齢者。民医連の全国調査には、怒りの声が多く寄せられました。青春時代を戦争に翻弄され、苦労して戦後の 社会を築き、ささえてきた世代です。その人生を否定するような政府の仕打ち。人としての怒りがあふれています。岐阜民医連からも強い怒りの声が届きまし た。生の声を聞きに訪ねました。(板東由起記者)
「病の辛さだけで十分だ」
「空襲を生きのびた。戦後もがんばって生きぬいた。その私たちに『もう用はない、早く死ね』と言うのか」。すこやか診療所に通院する黒田靖さん(79)は唇を噛みしめました。
黒田さんの年金手取り額は昨年、四万一〇〇〇円も減少。老年者控除が廃止され、所得税が増えたからです。しかも後期高齢者医療制度で、保険料は三万五七 〇〇円も増えました。白内障の手術をし、眼科以外にもいくつかの科に受診中です。医療費は月に約一万六〇〇〇円かかります。
暮らしは楽ではありません。「国は『保険料は下がる』と宣伝しとったが、ごまかしだった。通知を持って市役所に抗議に行ったら、担当者は『仕方ない』と言いよる」と怒りました。
黒田さんは軍国少年でした。海軍の予科練に志願しましたが、耳が悪くてはねられました。その後、学徒動員で軍需工場で働きました。「私らの世代は戦後、 死にものぐるいで働いた。給料も、まともに貰えなかったし、教育だって十分に受けられなかった。年をとって、楽ができると思ったのに。病の辛さだけで十分 だ。もう国は勝手なことをして振り回さないでくれ。まわりの人たちも怒っている」。
医師が診察前に訴え
署名を集めている華陽診療所は、外来の約四割が七五歳以上です。いち早く動いたのは青木敏之所 長でした。診療所のある地域は一人暮らしの高齢者が多く、患者さんから「年金が減って食事を二回にした」「制度が始まったら、もう診療所に来ちゃ行けない の?」などの声があったからです。
昨年から診察を始める前に待合室で署名を訴えています。一一時になると事務や看護師が訴えます。廃止法案が「継続審議」になり、いっそう力が入っていま す。「廃止法案を早く成立させるためには署名を」とすすんで前に立つ職員や、「新聞を読んで訴えている」と話す職員が増えています。待合室に調査結果を張 り出した柴山靖章事務課長は、「たたかいはまだ続く。もっと署名を集めなければ」と力強く言います。
秋の国会で廃止させたい
みどり病院のSWの松田光代さんも高齢者の相談を受け、思いを聞いています。
その一例。「国保に残った身体障害の患者さんが区分IIと同じ所得区分になり、入院したら食事代が倍になった。後期高齢者医療制度を選ぶと保険料が高く なる。障害年金だけの生活で、どっちに入っても苦しい。事前の説明もなく、施行されてわかった。まだまだ問題が出てくるでしょう」。松田さんは「相談室だ より」などで職員に知らせるつもりです。
岐阜民医連・事務局長の高田一朗さんは「これからの運動が、秋の国会での廃止法案成立のカギ。中だるみしないよう相談会や一一〇番に集まった声を知らせて、運動を引き締める」と、決意を固めていました。
高い保険料 「生活できない」―全日本民医連の調査から―* 貯金はあと数カ月で底をつく。息子の扶養だが、やがて保険料を払わなくてはならない。電気、ガスが止められたらどうしようか…。死んだ方がマシ。(長崎) |
(民医連新聞 第1431号 2008年7月7日)