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民医連新聞

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9条は宝 私の発言〈36〉 平和憲法にふさわしい、人にやさしい経済を

品川 正治(まさじ)さん(経済同友会 終身幹事)
 一九二四年、神戸生まれ。四四年、徴兵で中国戦線へ。東京大学法学部卒。現在、国際開発センター会長、経済同友会終身幹事。日本興亜損保(旧日本火災)社長、会長、経済同友会副代表幹事、専務理事を歴任。
  著書は『戦争のほんとうの怖さを知る財界人の直言』、『9条がつくる脱アメリカ型国家』など。

 品川さんは、憲法九条を守る立場を鮮明にしている数少ない経済人です。戦争体験も踏まえ、人間らしい目で戦争を批判し、経済を考える品川さんに話を聞きました。(聞き手 佐久 功記者)

泣いて迎えた「九条」

 私の憲法との出会いは、戦地から帰ってくる船の中でした。日本国憲法の草案が載った新聞が配られ、全員で声を出して読みました。そこで九条のところにきたら、みんな泣きだしたんです。
 私は前線にいましたし、「もう二度と戦争はすべきじゃない、これからの日本は、戦争しないという生き方しかないのでは」と感じていました。だから、「よくここまで踏み込んでくれたな」と思いました。
 戦争というのは地震とか天変地異じゃない。戦争を起こすのは人間だ。逆に戦争を止める努力ができるのも人間だ。これが、私の「座標軸(ざひょうじく)」になっています。

経済はどうあるべきか

 平和憲法を持つ国の経済のあり方はどうあるべきかが、私にとって大きなテーマです。日本の憲法は、人間らしい目で戦争を見て、もう絶対にしないという立場です。日本の経済も人間の目で見なければならないはずです。
 例えば、医療とか教育、農業もですが、これは人間の努力で成り立つものです。それを市場に任せてはいけない。コスト削減とか、効率的かとか、そういう視点だけで見るのはよくないのです。

日米の価値観は違う

 「日米は価値観を共有している」と、経済学者の竹中平蔵さんとか元首相の小泉さんは言います。財界団体も、アメリカが要望する規制緩和や改憲などを掲げています。しかし、価値観ははっきり言って違います。
 ずっと戦争し続けてきたアメリカと、戦争をしないという価値観を築き上げてきた日本が同じはずがない。だから、「アメリカにすり寄るのはやめてくれ」と言いたい。
 アメリカ型の資本主義は、「経済成長の成果は全部資本家のもの」という、資本家のための経済になってしまった。しかも、お金が利益を求めて世界中を動き 回っている時代です。それに振り回されて、国際経済全体がかく乱されています。私が言いたいのは、資本家のための経済を早く脱却して、国民のための経済を やれということです。日本はアメリカ型の経済を選んではいけない。
 日本では、かつての私も含め、資本家のために仕事しているという気はありませんでした。社員と代理店と得意先、その人たちから尊敬されてはじめて、社長がやれると思っていました。
 社長の給料は社員の多くて六~八倍が普通です。今のアメリカのように何十倍などはあり得ない。社員の給料を下げて自分のものにするという馬鹿な考えは、 日本の経営者にはなかった。ところが今は、アメリカをまねて、口を開けばリストラです。もうめちゃくちゃです。
 なぜか。それはアメリカを市場にしている企業が、財界の主流だからです。「アメリカの言うとおりにやるのが一番いい」という感覚があるんですね。

旗竿(はたざお)を離していない

 自民党や政府は、解釈改憲で自衛隊をつくり、有事法制をつくり、とうとう自衛隊をイラクに出しました。九条二項という旗は、もうボロボロです。去年は憲法を変える法律までできました。
 でも、去年の参院選で自民党は大敗しました。その結果を見ると、まだ国民は旗竿を離していない。これが今の日本の現状だろうと思います。
 そして、九条二項を生かす方向に日本が歩み始めれば、世界を変える大きな力になります。世界第二位の経済大国で、一〇〇%アメリカの従属国だと思われて いた国が変わるわけですから。だから今は、日本人が世界史を変えられる立場にいる、そんな時代なんです。

(民医連新聞 第1429号 2008年6月2日)