民医連 つなげよう伝えよう 看護 (7) 東京 大田病院 個人を深く理解する 高校生の模擬面接試験
大田病院は内科、消化器外科が中心の二一一床の小規模な病院ですが、爆発的ではないにせよ、奨学生を着実に迎えています。
私たちの考え方が、小規模病院のヒントになれば幸いです。
7年先のイメージ
当院は「最終学年の奨学生がゼロ」という三年間を経験しました。それでそれまでの看対活動を分析し、その結果、奨学生獲得のプロセスが欠けていたことに気づき改革を始めました。
高校一年生が看護大学を卒業するまでが七年です。「七年先にはこうありたい」という大まかなイメージを描いて、七カ年方針を立てました。二〇〇八年度はその三年目です。
「深い人物理解」から
方針の核の一つが「深い人物理解」です。それまでも一日看護師体験などで多くの学生とつながっ ていましたが、学生個人の深い人物理解までは至っていませんでした。そこで着目したのが高校生の模擬面接試験でした。それを単なる「受験対策」でなく、 「深い人物理解の場」にしたのです。そして「後継者対策は法人の重要課題」という方針にそって、法人の管理者や研修担当者に「試験官」になってもらいまし た。
面接では生徒のトレーニングだけでなくコーチングもします。中には泣き出す生徒もいますが、泣く子は間違いなく育ちます。そんな子は真剣に自分を振り返 るからです。「泣いた子は奨学生になる」がジンクスになるほどです。
出会いはチャンス
大切なことは、学生との信頼関係です。これなしに、どんなよい話も伝わりにくい。「伝えたことが伝わったことではなく、伝わったことが伝えたこと」を肝に銘じています。
もう一つは、関わったスタッフに必ずフィードバックすることです。たとえば「あなたが面接した学生が奨学生になったよ」と伝えます。それがあらゆる場面でよい循環を生み出し、活動を発展させると思います。
こうして、今年度は新たに七人の奨学生を迎え、トータルで一二人になりました。うち九人が模擬面接試験の経験者です。ほかの奨学生にも共通して言えるこ とですが、「出会いをチャンスに、すべての企画が採用につながるというモチベーションと、信頼関係をベースにした深い人物理解が重要」というのが結論で す。
奨学生を増やせる情勢
当院の場合、奨学生は社会の縮図です。父親が病気で働けず、母親が保険外交員と夜のパートをし ているという学生。親が離婚し、経済的に苦しい学生。親が大病を患い、医療費負担が重いという学生。フリーターから転身、手に職をつけたいと単身生活する 学生。表面的な付き合いでは、このような状況はわからなかったと思います。
学生たちが安心して学業に専念できる社会にするためにも、「社会変革のスタンス」を外さない民医連運動が大切です。その実践が奨学生を増やすことにつながる情勢だと確信しています。(大山耕二、看護学生室)
(民医連新聞 第1429号 2008年6月2日)