医療崩壊を加速する08年診療報酬改定
〇八年診療報酬改定は、厚労省のいう「本体部分〇・三八%プラス改定」「勤務医支援」どころか、大多数の医療機関にとってはマイ ナスです。現場の混乱、医師の疲弊、救急医療や地域医療の崩壊を加速しかねません。さらに「選定療養(混合診療)を拡大する」という大問題も含んでいま す。全日本民医連の室田弘事務局次長と窪倉みさ江副会長に聞きました。
撤回させ再改定を
室田 弘(事務局次長)
厚労省が「病院勤務医支援」という内容は、診療所や中小病院から削って、大病院の一部に付けるものです。今回、生活保護の母子加算を削って診療報酬に回すなど、反社会的な手法まで取っています。「分断」の意図が色濃く見えます。
背景には「医療・福祉予算二二〇〇億円削減」の政府決定があります。小泉内閣の「骨太方針二〇〇六」を堅持し、今後四年間で合計一・一兆円を削減すると 説明していますが、毎年削った上に削るので、五年後は今より総額三・三兆円低くなります。
たとえば「入院時医学管理加算」は一二〇点になりましたが、加算の要件を満たすのは全九〇〇〇病院中一八〇院ほど(厚労省試算)。従来の六〇点の加算は 廃止なので、多数の病院は減収になります。三〇〇床規模で約六〇〇〇万円の収入ダウン。これでは、地域医療をささえている病院が持ちこたえられません。
医療は大病院だけが担っているのでなく、地域の診療所や中小病院も含む連携で成り立っているのに、これを忘れているとしか言いようがありません。
混合診療への危険
その要件も問題です。「外来診療を縮小する体制の確保」として「初診の選定療養の届け出と患者から実費徴収を含む」とされました。選定療養は「混合診療」の一種です。「診療報酬に選定療養は持ち込まない」という従来の厚労省の立場を転換するものです。
外来患者を制限すると病院勤務医の負担が軽減する根拠もありません。
リハビリ医療にも選定療養が持ち込まれました。算定日数上限を超えた場合も一カ月一三単位まで診療報酬で認め、それを超えた単位を選定療養にしました。
今改定は、後期高齢者医療制度の報酬に関わる部分は無論のこと、混合診療の道を拡大し、医師・看護師不足や医療危機を放置し、医療崩壊をさらにすすめる大改悪です。
全日本民医連では、公私を問わず全国の医療機関がいっしょに再改定を求める運動をすすめる必要があると考えています。「医療・介護再生プラン」で懇談を広げることが重要です。
病院ふるい落としの道具
窪倉みさ江(副会長)
二〇〇六年の診療報酬改定で新設された「手厚い看護体制7対1入院基本料」算定病院は二〇〇七年五月一日現在八一四施設となり、一昨年の同時期に比べ三倍になりました。
〇七年一月に中医協の建議が出され、「急性期等手厚い看護が必要な入院患者が多い病院に限って届出が可能となるようなものにすること」とされ、今改定で「7対1」看護に看護必要度が導入されました。
看護必要度とは、A(モニタリング・処置)で二点以上、B(患者の状況)で三点以上を「重症」と定義。「入院患者の一割以上が重症」を「7対1」看護配置の要件にしたものです。
ところが厚労省委託研究「看護必要調査」の結果では、各入院基本料のA得点の平均値差は小さく、B得点では13:1がもっとも高く「手厚い看護」の必要 性は、入院基本料で線引きできず、民医連の調査でも同様の結果でした。今改定では、A得点の重症度評価をさらに厳しくして、看護必要度を導入しました。厚 労省は「これで二割が脱落する」と説明しています。今後は、毎日必要度をチェックするなど事務作業が増え、「手厚い看護」と矛盾することも懸念されます。
民医連でも独自の調査を行い、厚労省に見直しを求めていく予定です。
入院時医学管理加算の要件
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(民医連新聞 第1428号 2008年5月19日)