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民医連新聞

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9条世界会議 「9条って、世界から見てもすごいんだ」

 五月四~六日の三日間、千葉県にある幕張メッセで「9条世界会議」が行われました。憲法九条の考え方を世界に広げ「武力によらな い平和を実現しよう」というのが目的です。三一カ国一五〇人以上の海外ゲストが集まる、九条を掲げた国際的な初めてのイベントです。また大阪や広島、仙台 でも行われました。
 民医連でも積極的な参加を呼びかけました。新潟民医連からは、青年職員たちが一三人参加。九条のすばらしさを実感しました。(佐久 功記者)

 「武力によらない平和を」が「9条世界会議」のテーマです。イラク情勢の泥沼化など、いま世界では暴力と戦争の連鎖がすすんでいます。そんな中、世界で平和を求める人びとが九条の考え方に注目し始めました。
 これに呼応し、日本でもピースボートや日本国際法律家協会が、多数の団体や個人に呼びかけ、日本で「9条世界会議」を開くことになりました。憲法九条の 世界的意義を明らかにし、理念を実現するために、私たちに何ができるのか。それを話し合う場として生まれました。

バスで六時間かけ

 「9条世界会議」に向け、新潟では地域の青年団体などが実行委員会をつくり、一泊ツアーを企画しました。
 新潟民医連では、労組の吉田健さんを中心に「九条のすばらしさに触れてほしい」と参加者を募集。新入職員四人を含む一三人が参加しました。舟江病院の山 木可南子さんは、三月に池田香代子さんの講演を聞き、憲法を身近に感じて参加を決めました。
 ツアーは、一般企業で働く青年や新潟大学の学生もいっしょです。
 四日の朝六時、バスに乗り込み新潟を出発。途中、車内で予習を兼ねて憲法クイズを楽しみ、交流しながら、六時間かけて会場に着きました。

予想以上の参加者

 初日は主催者の予想をはるかに超え、定員七〇〇〇人の会場はいっぱいに。三〇〇〇人以上が入りきれず、前の広場を急きょ第二会場に。そんな熱気の中、始まりました。
 各国からゲストが発言。国際平和ビューロー元会長のコーラ・ワイスさんは「ボリビアでは、軍隊をもたないと定める新憲法の国民投票を予定している。また 人類は、アパルトヘイトを廃止した。女性の無権利や奴隷制、植民地政策も変えてきた。戦争も廃止できる」と訴えました。
 元日本弁護士連合会長の土屋公献(こうけん)さんは「軍をもたない国が七カ国から三〇カ国に。九条をもつ日本に世界三位の軍隊がある。この情けない状態を脱しよう」など、力強い報告があい次ぎました。
 また九条ピースウォークの報告、ダンスやゴスペルなどのライブも行われ、平和や人権の大切さを表現しました。
 講演を聞いた穂波の里の星名さゆりさんは「平和を守りたいという同じ気持ちの人がこんなに集まり、びっくり。その一人として参加できてよかった」と語りました。
 二日目は分科会、一〇〇以上の団体が展示などを行いました。最終日の総会では「9条世界宣言」を採択、九条のもつ力、すばらしさを内外にアピールしました。

新潟の青年たちは平和と9条を考えた

「まず身近な人から」

斎藤美紀さん(舟江病院・看護師、新入職員)
 新潟では、自衛隊が地震の「復興支援」をしており否定的な印象がありません。でも、九条で交戦権を放棄している日本が軍隊を持っている。矛盾を強く感じました。

山本静華さん(下越病院・看護師、新入職員)
 コーラ・ワイスさんの「一人でも、メールで行動できる。政治家の担当になり、九条を取り入れるよう説得してみて」という言葉などが印象的でした。

山木可南子さん(舟江病院・看護師、新入職員)
 こういう活動に初めて参加しました。世界というものがとても大きなものに感じていたけど、自分が変わることで、周りの世界も変わる。世界が身近になりました。

星名さゆりさん(穂波の里・介護職、新入職員)
 「武力によらない紛争の解決を」という日本の憲法九条って、世界の人から見てもすごいんだな、と分かりました。こういう会に出るとか、何かちょっとしたことをしていけば、何か変えられる気がします。

渡辺大樹(ひろき)さん(舟江病院・事務)
 「無関心から戦争が生まれる」。これは今の日本のこと。政府の悪政に無関心。無関心な人にどう広げるかが課題です。

内田浩貴さん(穂波の里・相談員)
 周囲の人たちと語り、お互い納得して良い方向に行くこと、それぐらいなら自分もできる。反対する人に押しつけるのでなく、話し合いをするというのが「九条」ですから。

9条世界会議・セッション

貧困とつながる戦争

 「9条世界会議」のトークセッション「イラク、アメリカ、日本」から五人の発言を紹介します(四日)。
 アン・ライトさんは、米国の元陸軍大佐で反戦活動家。イラク戦争に反対して辞任しました。「米国が九条を変えるよう圧力をかけるのは、テロとの戦争に日 本を参加させたいためだ。つまり九条の存在は、米国の軍事行動の歯止めになっている」と発言しました。
 エイダン・デルガトさんは、米国の良心的兵役拒否者です。イラク戦に行き、「戦争は人殺し、市街地を破壊し、お互いをめちゃめちゃにすること」と悟りま した。「戦争を美化するテレビを見て育ち、目的を見失っていた一八歳のとき、何かを期待して軍に入った。だが戦争は人殺しと残虐行為を合法化するものだっ た。私は、間違っていると口に出して言うと決め、その危険を覚悟した」と語りました。
 カーシム・トゥルキさんは、元イラク兵で、いまは人道支援ワーカーです。「二〇〇三~五年は、失ったもの破壊されたものの再建に費やした。戦争に終止符 を打ちたい、とピースメーカーになる決心をした。国同士が敵対しないことがベストだ。軍では人道活動はできない」と発言。
 雨宮処凛(かりん)さん(作家)は「貧困率の高さが世界第二で、世界第三位の軍事国家が日本。年間八〇〇人が餓死する日本。憲法二五条、生存権が脅かさ れ、職を求めて若者が自衛隊に入っている。これは米国に似た状況。戦争は貧しさとつながっている。軍事費をやめて人間の生存のために使え、人を殺すために 使っている金を生きさせるために使え、と言いたい」と話しました。
 高遠菜穂子さん(イラク支援ボランティア)が「四人の報告は、一見バラバラに見えてつながっていると思いませんか。私が人質事件で考え続けているのは、 日本が九条を逸脱した行為をしたから人質にされ、丸腰で対話し、現地を支援した活動、つまり九条の実践が認められたから殺されなかった。九条で命が守られ たと思っている」とまとめました。

9条世界会議・分科会

紛争解決は非暴力で

 二日目は、シンポジウムや映画など四〇以上の企画がありました。
 シンポジウムのひとつでは「世界の紛争と非暴力」をテーマに、パネリストが紛争現場から学んだ解決の方法を話しました。
 ボスニアのヤスナ・バスティッチさんは「戦争や紛争は民衆の支持で起きている。市民が受け身でなく、何ができるかを考えることが大切」と語りました。
 ケニアで起きた暴動を草の根レベルで解決に尽力したフローレンス・ンパエイさんは「民族間の不信感が原因であり、解決には女性の力が不可欠」と発言。
 アフガニスタンやシエラレオネで、国連DDR(武装解除・動員解除・社会復帰)プログラムの日本代表をつとめた伊勢﨑賢治さんは「紛争の原因になる貧困 や民主化の遅れに対しては、予防的援助が重要。紛争は武力で解決できないことは明らか。市民レベルの対話が必要」と説明しました。
 フロアとの質疑も活発に行われました。法学者のエル・ハル・ムボッチさんは「米国には『各州の平等は何人も覆せない』という規定がある。世界の宝である 九条も改変できないことを規定すべき。憲法改正を専門家任せにするのではなく、国民が考え、世界にアピールしなければならない」と訴えました。

(民医連新聞 第1428号 2008年5月19日)