運動方針案の説明(要旨) 長瀬文雄事務局長 まっすぐな人権意識で新たな時代を切り開こう
七九年前の三月五日、侵略戦争に反対した山本宣治が暗殺されました。「命は平等」「労働者、農民の病院をつくれ」という志を受け継ぐ決意を込め、四点を強調し、提案します。
切り開いた活動に確信を
方針案は、第一に「民医連の日常の活動と運動に確信をもち、医療・社会保障の改善、平和のためにいっそう奮闘しよう」と、呼びかけています。
高齢者生活実態調査やSW委員会がとりくんだ生活保護老齢加算廃止の影響調査、「一職場一事例運動」など、まっすぐな人権意識で患者・国民の権利のため に活動したことが、マスコミにも注目され、患者の実情を浮き彫りにしました。
医師・看護師ふやせの運動では、「地域偏在論」や「病床過剰論」が主流だったマスコミの論調を変化させました。医師では、「医師増やせ、地域医療守れ」 の集会に医師会や自治体首長が賛同するなど、運動が広がっています。看護では、全日本民医連がとりくんだ看護請願署名が一〇〇万筆を超え、衆参両院で全会 一致で採択されました。また、自らの看護実践をパンフレット『キラっと輝くたからもの』にまとめました。
青年を先頭にした平和運動は、広く深く全国とつながっています。確信を力にして、医療崩壊や改憲を食い止めるために奮闘しましょう。
日本を救う「再生プラン」
第二に、医療・介護の崩壊の危機に対する処方せんとして「再生プラン」を提起しました。
あまりにひどい、地方や国民生活を切りすてる政治に「怒り」が巻き起こっています。
薬害C型肝炎のたたかいでは、政府の「一部救済」という姑息な和解案を拒否し、苦しんでいる被害者全員の救済を求め、勝ち取りました。
政府がねらう医療・社会保障の破壊、消費税増税、軍国化の道ではなく、憲法の理念を生かし、税金の取り方・使い方を「平和と福祉」へ変えることが必要です。
全日本民医連は、財源論や軍事費削減にも踏み込んだ「再生プラン」を提案しました。これを練りあげ、医療・福祉関係者や政党、多くの国民と対話し、実現をめざしましょう。
「連帯」の力で困難を打開
第三は、民医連が期待される一方、厳しくなる現場の困難に対し、どう解決するかを提起しました。
医師・看護師不足から診療縮小や病棟閉鎖が余儀なくされています。それぞれの医療や福祉の状況、地域の要求をつかみ、全国の経験からも学んで、職員・共 同組織・地域の仲間とともに、具体的な方向を打ち出す必要があります。「参画」「連帯」「共同」がキーワードです。
また、第三章に各分野の課題を一二項目打ち出しました。経営の困難は日本中の医療機関に共通であり、くらしの困難は多数の国民に共通です。小手先に走ら ず、長期を見すえて総合力を高め、団結を強める立場で奮闘しましょう。
方針案は、民医連の病院は、あらためて室料差額に頼らず奮闘すること、必要な医療環境改善は公的保険で、との運動を強めることを呼びかけました。
今回、無料低額診療、県連機能強化も再度呼びかけました。
憲法生かす新綱領を提案
第四は、約半世紀ぶりに綱領の改定を提案したことです。民医連が「無差別・平等の医療・福祉」の立場を実践し、「非営利・協同」の事業・経営・運動体として発展してきた歩みを、前文に記しました。
また「憲法を生かし、人権を守り、情勢を変革する」社会的使命を掲げました。本文の目標は六点です。後文で「より開かれた民医連」の立場を提起しました。
この議論は、次世代に民医連運動のバトンを手渡す作業です。全職員、共同組織の仲間と「民医連とは何か」「どこに向かうのか」を問い、未来をつくる作業です。
理事会案について討議し、深め、多くの人びとの参加で、遅くない時期に改定したいと考えます。積極的な提案を歓迎します。
参加者の感想文から
◆方針案のボリュームが多くて、持て余し気味でしたが、三日間参加し、考えをあらためました。多 くの問題、とりくみが報告され、ボリュームが増えた理由がよくわかりました。各地の医療崩壊の様子がリアルで、様ざまな困難事例、医師・看護師不足の実態 報告はどれも真剣で心がこもり、感動しました。
◆深い感銘を受けました。「ある社長とあるホームレスが同室に入院し、笑顔を交わす」場面を当然のことと経験していましたが、それが「民医連ならではの医 療」の縮図と知らされ、そうでない医療現場を想像して恐怖を感じました。また、(差額問題で)排他的にならず、議論する態度に共感しました。
◆いままで活字でしか見ることのなかった総会方針が、初めて生きた知識となったようで、感動を覚えました。
◆「医療・介護再生プラン」は、新しい国づくりプランです。いまの日本の低迷、福祉の後退を改善するには、私たちが声をあげなければ、と確信しました。
◆民医連ってすごい。すごい人たちが仲間。その中にいることをとても嬉しく思いました。
◆民医連で働き続けてきて、よかったと思いました。日本看護協会会長の連帯のメッセージが聞けたこともよかった。ナースウエーブの運動以前は考えられませんでした。
(民医連新聞 第1424号 2008年3月24日)