千葉民医連 看護師が対市交渉 研修でまとめた困難事例から改善求め
千葉民医連の看護師・中堅二次研修では、事業所で経験した困難事例をまとめ、制度改善の要望書をつくり、それをもとに「対市交 渉」を行っています。今回は一〇事例をもとに「療養病床削減の中止・撤回」や「福祉用具の利用制限見直し」などを求め、一月三一日に千葉市との交渉に臨 み、自分の言葉で訴えました。(横山 健記者)
痛恨の思い 患者の悔しさ伝え
「難病・ウィルソン病の終末期で寝たきりになり、二四時間の介護が必要になった三〇代男性。若いため介護保険も利用できない。ほかの入院施設では個室が必要で、医療費と合わせ毎月の負担は六〇万円前後になります。身障手帳を申請中に亡くなった」 。
痛恨の思いをこめて事例を報告したのは高橋麻衣子さん(千葉健生病院)。「若くして介護が必要になった場合、使える制度や施設がほとんどないんです。こ の患者さんには、最期までお金の心配がつきまとった。安心させてあげたかったのに」 。母が高齢のため、二人の兄が働きながら介護し、とても苦労していました。
徳田三枝子さん(船橋二和病院)も発言しました。糖尿病と神経障害があり、身障手帳二級の六〇代の独居女性。起きあがりが困難なのに、市の調査員は「な んとかできる」と判断し、電動ベッド貸与を却下しました。「調査員の前では無理してできたが、常に転倒の危険があり、介護度が高くなる。生活環境を考えて 判断してほしい」と、判断基準の見直しを迫りました。
年金総額が一八万円で、介護保険料が払えず、介護が受けられなかった八〇代の認知症の女性など、一〇事例から見えてきた問題点から制度の改善を求めました。
市側は「厚生労働省が事務的に伝えてくることが、地域の実情に合わないこともある。福祉用具の貸与は、状況が変われば再申請してほしい」と話すなど、指摘は受け止められました。
話し合いの後、一人の課長が高橋さんに歩み寄り「今後、同じような事例があれば、すぐに対応する」と約束。交渉は例年より三〇分長い一時間半におよびました。
要望書つくり交渉
中堅二次研修は、五~八年前後の看護師が対象で、患者を社会的にみる視点を深め、看護師長や主任をささえ、現場の中心となる若手を育てることが目標です。
医療や介護の現場で起こっている困難事例の原因をつかみ、行政に何を改善させればいいかを考えます。二〇〇一年からは、事例をまとめて要望書をつくり、事業所のある千葉市、船橋市のどちらかと交渉を行っています。
たたかうことも 民医連看護
近藤廣美さん(みなみはま訪看ST)は「貴重な経験。行政の方針や姿勢が分かった」。大久保智恵子さん(千葉健生病院)は「病院という小さい組織でも、事例を出し合えば要望書になる。行政の問題も多く、お互いにもっと勉強しなければ」と感想を語りました。
研修担当者の井関むつみさんは「回を重ねるごとに自覚や民医連の視点がしっかりしてきた」と評価。佃八重子さんは「劇的に変わるということはないかもし れない。でも、現場で困難事例に気づき、看護師として、患者の人権を守るためにたたかうことも民医連の看護だと思います」と語りました。
看護師たちは、もっと具体的な要求を練りたいと話し合いました。
(民医連新聞 第1423号 2008年3月3日)