• メールロゴ
  • Xロゴ
  • フェイスブックロゴ
  • 動画ロゴ
  • TikTokロゴ

民医連新聞

民医連新聞

看学生が行きたい病院に 働きつづけられる条件づくり 医療生協さいたま

 民医連看護を伝え、つなげるとりくみを連載します。第一回は、医療生協さいたまです。同法人は看護師確保三六人の目標を〇六年か ら毎年達成しています。〇二年に「看護職員の確保と育成の基本指針」を定め、厳しい中でも、生涯教育制度の確立、労働条件や処遇の改善、確保体制の強化 を、一つひとつすすめてきたことが実を結んでいます。(川村淳二記者)

“総合看護力”が身につく教育制度

母のように  姉のように

新卒も中堅も育つよう

 「学生が第一選択にしてくれる病院になろう」。基本指針では教育制度の充実を打ち出しました。「総合的な看護力」を身につけ、「ここに入れば、辞めなくても生涯教育が受けられる」と、思ってもらえる制度です。
 卒三までは、プリセプターや看護長がしっかりフォロー。卒後四年目以降は、病院・診療所・訪問看護ステーションでのジョブ・ローテーションで、総合的な看護力がつくよう、きめ細やかに育てます。
 さらに中堅・ベテランになってからも、看護師の力量を発展・成長させることができ、展望をもって働き続けられるように、専門・認定看護師育成も含めた生涯にわたる総合教育課程の確立をめざしました。

看護長全員でフォロー

 プリセプター(新人看護師を指導する先輩看護師)はがんばっています。しかし、仕事を続けてい くプロセスで、若い看護師たちは、公私ともに様ざまな葛藤に苦しむことがあります。そこで「私たちベテランがどうフォローするか考えました」と、牛渡(う しわた)君江・法人看護部長は言います。
 県連看護長会議で話し合い、離職防止を目標に、卒一~三年の「母親のような役割を担おう」と、診療所も含め、すべての看護長が若手看護師一人ひとりを担 当することにしました。「若い看護師にとって、自分を常に気にしてくれるプリセプターがいて、ときどき励ましてくれる看護長がいることは心強いと思う」 と、千葉妙子・埼玉協同病院総看護長も話します。
 看護長たちは、卒一にはメッセージやクリスマスカードを出し、卒二には「生活と労働を知るフィールドワーク」の助言者となり、卒三には診療所・訪問看護ステーション研修の受け入れと直接の指導を行っています。
 「今年は、卒二が鋳物工場で働く人の事例をまとめましたが、その相談者は診療所の看護長です。実際に工場を見学したことで、看護の発想が変わったようです」と、稲村まゆみ・法人保健看護課長(保健師)も話します。
 こうした活動で、若い看護師の退職者を出さないように努力しています。

法人の最重要課題に

 法人も看護問題を最重要課題に位置づけ、〇五年に労働条件と処遇の改善、確保体制の強化などを一気にすすめました。
 二交代制の導入や労働条件の改善に加え、夜勤手当の増額や看護手当の新設、病棟看護師の休日増など、思い切った対策をとりました。さらに認定・専門看護師の育成のため、国内留学制度も具体化しました。
 看護師確保の体制は、法人本部の保健看護課を事務局に、埼玉協同病院の副総看護長を看護学生委員長に位置づけ、事務専任を配置しました。
 事務系幹部と看護長以上がペアとなり、二〇都府県一〇〇校以上の看護大学・学校を訪問しました。「学校側は、必ず退職率と卒業生を一人前の看護師にでき る組織かどうかを気にします。私たちの生涯教育制度やフォロー体制には、とても関心が高い」と、稲村さん。「育てる」姿勢が理解され、看護学校からも紹介 があります。

県連的支援が転機

 このような改善は自然にすすんだわけではありません。中堅職員の異動で、病院の看護師不足が常態化、また電子カルテやリスク管理など、業務が煩雑・複雑化し、病棟に疲弊感が生じた時期もありました。
 〇四年度は、新卒採用者の二四%が一年以内に退職し、〇五年六月には、法人内のすべての看護師に「センター病院への看護師緊急支援」を呼びかける事態に陥りました。
 しかし、この支援が転機となりました。病棟の看護労働の実情を診療所や訪問看護ステーションの看護師も共有することになったのです。看護師確保に法人をあげてとりくみました。

看護の価値がナースウエーブの力に

 〇七年一二月、『地域とともに産み・育み・看とる』(コープ出版)を発行しました。卒一~三年の看護師が研修で体験した事例などを紹介した本です。
 「『なぜ看護師は辞めるんだ』『しっかり育てているのか』といつも組合員さんに言われるけど、いいこともいっぱいやっていて、苦労しながら一人ひとり育 てていることを共有してもらいたかった」と、牛渡さん。そして、命に向き合っている看護師たちが、看護の価値を見失ったり、その重みに押しつぶされないで ほしいと「元気が出る本」にしました。
 働き続けられる条件は、内部の努力だけでは限界があります。この本が「よりよい看護を受けたい」という国民のニーズにつながり、ナースウエーブのエネルギーになればと話します。

(民医連新聞 第1422号 2008年2月18日)