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民医連新聞

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診療報酬は引き上げを 患者・国民にも訴え運動しよう 全日本民医連が声明

原 和人副会長にきく

 一月一八日、四月実施の診療報酬改定の「骨子」が出されました(中央社会保険 医療協議会総会)。連続の「引き下げ」で、いま起きている医療崩壊の危機を解決するどころか、いっそう深刻化させます。全日本民医連は声明を発表し、診療 報酬の抜本的な引き上げを求めました。「骨子」の問題点について、原和人副会長に聞きました。

マイナス改定では中小病院が危機に

 救急や産科・小児科をはじめ医療現場のいたるところで起きている困難は、もう医療費の総枠を増やさなければ、どうにもならないところまで来ています。
 ところが、改定率は本体部分を〇・三八%引き上げる一方、薬価などを一・二%引き下げ、全体ではマイナス〇・八二%、二〇〇二年以降四回連続のマイナス 改定です。特に第一線の地域病院や診療所にとって、大幅なマイナスが予想されます。今改定で危機がいっそう深刻になることが心配です。医療の現場で起こっ ている問題の最大の要因は、医療費を抑制してきた政策です。「マイナス改定は言語道断。大幅な引き上げを」と声を大にしていきましょう。

混乱・競争・淘汰ではなく地域病院を生かせ

 しかも今回の改定は、あい変わらず「こちらを削ってあちらへ付ける」という昔ながらの手法です。大規模病院や集約化・センター化した病院に傾斜配分し、再編と淘汰を誘導するものです。
 7:1看護やDPCなど要件を満たせる病院とそうでないところでは、影響が天と地ほど違います。救急医療の問題では、立ち行かなくなった地域の中小病院 が救急から撤退し、拠点病院に過度な集中が起きていることも一つの要因です。
 療養病床の点数を下げ、今まで慢性期の医療を担っていた中小病院の機能が低下したことが、急性期を担う大病院の機能もマヒさせています。
 「産科や小児科を始めとする病院勤務医の負担軽減」とうたっていますが、該当するのは、二四時間対応をする一部の病院だけ。
 センター方式の限界が明らかです。中小病院が、第一次の急性期医療を担い、慢性期の医療や外来診療を担って成り立つような点数改定が必要です。

後期高齢者を差別してはならない

 七五歳以上の再診料を引き下げることが検討されています。年齢による差別は容認できません。逆に高齢者は、診察に時間を要するのが常です。
 また、後期高齢者の外来診療では、かつての外来総合診療料のような包括性が検討されています。外来総合診療料は「分りにくい」「同じ医療を受けても支払 い額が異なる」という苦情が多く、廃止された経緯があります。復活させることには反対です。
 また包括点数の算定は「研修を受けた常勤の医師」(仮称‥高齢者担当医)に限ることが検討されています。高齢者が主治医以外の医師にかかることを心理的 に抑制したり、コントロールされかねません。高齢者が診療上差別を受けるというのは大問題です。

モラルがない生活保護を削る操作

 今回、診療報酬の本体部分を引き上げるための国庫負担増三〇〇億円のうち、五〇億円を生活保護の母子加算の削減で捻出するといいます。こんなことは許されません。国民を分断する悪意のこもった、倫理的にも「禁じ手」です。
 医療の矛盾は、医療政策そのものを変えないと解決しません。こんな操作自体が、冷たい政治姿勢を示しています。

たたかいの方向 現場から声を

 「骨子」には、病院勤務医の負担軽減、救急医療への対応、後発医薬品への誘導など、私たちが要求してきたことを、言葉の上では無視できなくなっている側面も見えます。
 しかしマイナス改定では、うたい文句にすぎません。現場から声を強く出すことを中心に、改善を求めていきましょう。
 一つは、点数が明らかになった時点で当てはめ作業を行い、今回の改定の影響を早急に評価しましょう。
 二つには、点数表が発表される二月から実施までの間に、問題点を明らかにして、解釈上の通知を出させることです。
 三つには、リハビリ日数制限などで患者の実態や不利益を明らかにして運動したように、現場の職員が患者・当事者の声を押し出していくことが大切です。救 急でも、集中化で起きている問題を、患者の声として出していきましょう。
 四つめに「医療費の総枠を広げ、もっと使え」の声をあげていきましょう。
 特に後期高齢者医療制度について、受療権の侵害をさせてはなりません。診療報酬だけでなく、医療政策自体の転換を求め「医師増やせ、看護師増やせ」の運動も続けていきましょう。

(民医連新聞 第1421号 2008年2月4日)

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