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民医連新聞

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貧困・格差広げる消費税 福祉目的税化のマヤカシ

 一九八九年、国民の反対を無視して導入された消費税。九七年には三%から五%に引き上げられました。次に政府は、税率を一気に一 〇%にまで上げようとしています。社会保障を切り捨て、その批判を逆手にとって、「福祉の財源に」と言って通すつもりです。「消費税アップ」か「低い年金 でガマン」かなど、二者択一を迫る政府のダマシにひっかかってはいけない。「消費税の本質」について、専門家の立正大学教授・浦野広明さんに聞きました。

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消費税は憲法違反

 自民・公明党の「税制改革大綱」(〇七年一二月)は、消費税の社会保障目的税化を打ち出しました。これに先立つ一一月、自民党の税制改革研究会は二〇一〇年代半ばに消費税率を一〇%にすると述べました。
 〇七年の消費税は、一三兆三一〇〇億円以上になります。消費税を一%上げると、二兆六〇〇〇億円の増収。国民一人の負担は、年間で約二万円になります。

 消費税の欠陥は、低所得の人ほど重い負担になる点です。月四万円の年金しかない人と、何千万円の収入がある人とでは重さが違います。実際に負担した〔消費税額÷所得〕でみれば、一目瞭然です。
 生存権を保障し、応能負担を原則とする日本国憲法にも違反します。反社会保障的な税に「福祉」の名を冠すなど、矛盾したことです。

それでも大企業優遇

shinbun_1420_02 政府は、消費税の引き上げの理由を「財源がないから」と、強調します。しかし本当の理由は、財界からの要求です。
 日本経済団体連合会(経団連)は、企業が支払う法人税や社会保険料負担を軽減し、高所得者の所得税を下げろと要求しています。その代わりに国民から消費税を取れ、というわけです。その見返りが政治献金です。
 政府は消費税導入の際、「高齢化社会に備えるため」と宣伝しました。その一方で、経団連などの要求に応え、企業への減税をすすめました。消費税で増える はずの税収は、企業への減税で相殺されてきました(図1)。今度も「社会保障のために」といいますが、これも企業が担っている社会保障負担と置きかえるこ とが狙いです。

さらに増える非正規雇用

 消費税は、雇用にも大きな影響を与えます。現在、派遣労働者や請負労働者が増加し、ワーキングプアが社会問題になっています。消費税が上がれば、さらに深刻な問題になります。
 事業者が納税する消費税は、課税売上から課税仕入を引いた金額にかかります。これはほぼ「人件費+利益」に等しいのです。つまり人件費率が高ければ、課税の対象になる金額が増えるわけです。
 そのため、企業は人件費になる「正社員」は雇わず、仕入値(外注費)に算入できる派遣労働者や請負労働者を使う動きが強まります。
  労働者は消費税率が上がると、買い物だけではなく、賃下げやリストラ、不安定雇用化という負担不安が強くなります。

投票で変えよう

shinbun_1420_03  政府や与党は、「日本の消費税率は低い」といいます。しかし、それは偽りです。世界の主要国の消費税率は高いですが、生活必需品は非課税や低税率にするな ど、低所得者の負担を緩和する措置がとられています(図2)。しかも国税収入に占める消費税の比率が、すでに日本はイギリスやイタリアと変わりません(表 1)。日本では生活必需品も贅沢品も同じ税率なので、いっそう悪質です。

 「庶民に大増税、企業・高所得者に大減税」という路線がはっきりしてきました。年金生活の高齢者やワーキングプア層、一般の労働者に苦しい生活を強いる消費税の増税。耐え忍ぶだけでは打開できません。
 個人消費が落ち込めば、日本経済は元気をなくし、貧困が原因の犯罪も増え、社会不安がさらに広がる悪循環に陥ります。今こそ、税金のあり方を考える「大きな方向転換」が必要です。
 国政・地方など、あらゆる選挙で、庶民増税に反対する世論をつくり、税制への意思表示をすることが重要です。私はこれを「税民投票」と呼んでいます。
 日本国憲法は、所得に応じた負担(応能負担)を原則とし、税金を平和や福祉、教育や社会保障に使うことを示しています。
 世界有数の経済力を持つ日本は、国民の幸せを第一に考える福祉大国になれる可能性を秘めています。それができない原因は、「政治の貧困」にあります。
 企業や高所得者に応分の負担をしてもらえば、消費税を上げる必要はなく、社会福祉への財源が生まれます。国会に「消費税増税」法案が提出されてからでは 遅い。そうなる前に税金をどう使っているのかを監視し、どう使ってほしいか、訴えていきましょう。

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(民医連新聞 第1420号 2008年1月21日)