地域医療を守るシンポジウム 低医療費政策を見直せ医師・看護師増やせ
都市部に求められる地域医療を守るシンポジウム」が九月二九日、東京で開かれ、医師や医学生など四一六人が参加。医師一五人の呼 びかけに関東地域の病院長など一〇〇人以上が賛同を寄せました。シンポジストの発言と各県の実情を聞き「医療崩壊の原因である医療費抑制政策を転換させ、 医師・看護師増やせの世論を高めよう」のアピールを確認しました。
安藤高朗さん(永生会理事長)は、政府が療養病床削減の根拠にあげた病院調査は「目的外の不適 切な使用」、医療費の伸びの将来予測も「不正確」と批判しました。また、東京は療養病床が不足している地域の一つ、と指摘しました。そして、政府が「過剰 な医師を生産することは税金のムダづかい」といって医師数を抑える政策をとり続けているのは誤り、世の中に訴えていこう、と発言しました。
鈴木厚さん(川崎市立井田病院地域医療部長)は、問題の根本を「政府が国民の医療にお金を出したくない」の一点にあると指摘し、「医療は単なるサービス ではなく、国民の生命と健康を守る安全保障。経済と連動して論じてはいけない」とのべ、解決策は「政府が医療にお金をかけること」と明快に示しました。
石川広己さん(千葉勤労者医療協会理事長)は、医師・看護師の絶対数不足の中では、奨学金や報奨金という手段で確保するのは「パイの取り合い」に過ぎな いと指摘。地域の病院や医師が連帯しささえあうことが大切とのべ、千葉県での例を紹介しました。小児二次救急の輪番を組んでいた四病院の一つが医師退職の ため困難になりました。そこで開業小児科医が夜間診療所で一次救急を担い、二次を緩和したという船橋市の連携です。
泉美貴さん(東京医科大病理診断部講師)は女性医師の働きにくさを分析。医師確保には「女性医師が続けられる環境づくりが欠かせない」と強調しました。
会場から、各地で起きている医療機関の廃止・縮小、救急体制の困難について発言が続きました。
コーディネーターの日野秀逸さん(東北大学教授)が「財源は十分にある。医療の充足に使うよう、現場から発信しよう」とまとめ、「女性の地位を見れば社 会の水準が分かる。医療界は女性医師を見れば分かる」と激励しました。
アピールを採択し、「医師数を早急にOECD平均水準に増やし、勤務医が働き続けられる労働条件を保障し、診療報酬を引き上げること」を「国民のための 安全・安心の医療に不可欠」という立場で訴えていくことを確認しました。
(民医連新聞 第1414号 2007年10月15日)