9条は宝 発言(29) 青年の発想を大切に♪ 医師も歌って楽しく参加♪
愛知・みなと医療生協はアメリカ軍がイラクに侵攻した二〇〇三年、抗議の提灯デモを繰り返しました。そのエネルギーで二〇〇四年 九月、「みなと医療生協九条の会」が生まれました。三年目のいま、会員は職員、組合員合わせ四四〇人以上に。「会員一人ひとりが主人公」がモットーです。 大勢の主役の活躍ぶりを聞きました。
医局に合唱団ができた
「何かやりたい」と思っている人は多いのに、活動する場が少なかったのですね。
いま、医局合唱団が私たちの「九条の会」で大評判になっています。「医師にどう参加してもらうか。いい方法は?」と考えていたら、ありました。医局の中 で歌える医師が多いのです。かつて名古屋大学男声合唱団や医学部混声合唱団で鳴らしていた医師が九人も。「九条の会で歌ってもらえないか?」と依頼しまし た。
みんな歌が好きで、すぐ医局合唱団を結成。平和の集会でドイツ歌曲「我が歌」などを歌っています。患者さんや組合員さんも「自分の主治医が歌っている」と喜んでくれます。経験者なのでなかなか様になっています。
今年の六月に開いた「平和の夕べ」でも歌いました。場所は外来の待合室です。ここだと看護師や入院患者さんも参加しやすい。「楽しみながら憲法九条を考えよう」と呼びかけたら、二〇〇人が集まってくれました。
みんな平和への想いを持っています。でも、どう行動したらいいのかが分からない。特技や趣味を活かし、楽しく活動することも一つの方法です。
憲法の話をする場増やし
九条の会をつくるとき、青年職員五~六人をなかば強引に事務局に誘いました。若者の発想と行動力が必要だからです。イベントの司会も青年職員に任せました。
最初にしたことは、タペストリー作りです。「会員一人ひとりが代表という気持ちで運動をすすめたい」という、青年らしい発案です。家にある布を一五セン チ角に切って、平和への想いを書いて持ち寄りました。二週間で一六二枚も集まり、一〇人ほどで半日かけて縫い合わせました。学習会などの会場に掲げたり、 平和行進や集会に持って行きます。
体験して憲法を考える企画を、と「無言館・松代大本営ツアー」「立命館大学平和ミュージアム見学」「戦争体験を聴き、すいとんを食べる会」などもしてい ます。参加した職員や組合員さんが「私も平和の語りべになりたい」と言っています。先日も、ツアーに参加した職員が「私の職場にもつくりたい」と言って、 病棟で「九条の会」を立ち上げました。こんなふうに、どんどん主人公が増えています。
会員を増やすだけではなく、私たちの会が起爆剤となり、地域や職場で憲法の話をする場も増やしたいのです。
加害者にもならない
私事ですが、実家に住む甥が古ぼけた木箱を持ってきました。亡くなった私の父が大切に保管して いたようです。中身を見て驚きました。戦死した父の弟たちが戦地から送った手紙や写真、戦死の知らせ、当時の雑誌など様ざまな資料が入っていました。雑誌 を見ると、国のために戦う兵士を送り出した家族が、勇ましく日本を守っている姿を宣伝する記事ばかり。国民を巧妙にマインドコントロールしていたのだと思 いました。
戦争の犠牲をもの語る資料だけではありません。加害者としての日本を表す写真も入っていました。枯れ木の枝に人の首をぶら下げている写真です。場所はお そらく満州でしょう。残虐な行為です。戦争がいかに非人間的でむごいものかを裏付けています。
被害者にも加害者にもならないために、戦争体験を若い人に伝えていく活動が大切だと思います。
いま、私たちの会では戦争体験者の聴き取りをしています。先日は九〇歳を超えた組合員さんから話を聴きました。ビデオに撮り、みんなで観ようという計画です。若者の発想を活かして、九条の会を広げたいと思います。
江間 幸雄さん(医師)
1941年岐阜県生まれ。医療・保健・福祉くらしのセンタークリニック・レインボー所長。
愛知・みなと医療生協9条の会代表
(民医連新聞 第1412号 2007年9月17日)