地域で医療を守る(15) 特別医療費助成制度の改悪はねかえす 鳥取
鳥取県は今年二月、特別医療費助成制度の「見直し案(来年四月実施)」を公表、六月県議会に提案を図りました。しかし、鳥取民医連はじめ関係者、市民は大きな運動で変更させました。
鳥取県の特別医療費助成制度は、重度心身障害者、就学前乳幼児、特定疾患患者、ひとり親家庭、精神障害者を対象に、医療費の本人負担分を免除・減額するもの。
「見直し案」は、小児の通院医療費の助成対象を、五歳未満から小学校就学前までに拡大する前進面がある一方、障害者について「原則一割負担」「所得制限 の導入」「入院時食事療養費標準負担額助成を廃止」するものでした。二〇〇八年度で約五億二〇〇〇万円、二〇一六年度には約八億円も利用者負担が増えま す。
療養病床中心の鹿野温泉病院では、入院患者の約六割が特別医療費助成制度を利用しており、大きな影響が懸念されました。
市民の声が県政動かす
鳥取民医連は二月、県主催の意見交換会に参加し、見直しの中止、改善を訴えました。また県のパブリックコメントに積極的に応募。コメントは、県全体で四一七件、その半数以上が民医連、医療生協からで、県が「これまでにない規模で集まった」というほどでした。
四月の県知事選挙では、鳥取民医連も加盟する「明るい民主県政をつくる会」の山内候補が、特別医療費助成制度の切り下げストップを公約に掲げ善戦。過去 最高の得票率を得ました。平井新知事は就任後の定例記者会見で「見直し案を再検討する」と報告しました。
また、四月に一週間連続で街頭宣伝、五月には宣伝カーも繰り出し、六月県議会に向けて陳情署名にとりくみ、七三三四筆を提出しました。六月に県から再提 案された修正案は、(1)小児は現状制度を維持した上で対象を「小学校就学前まで」拡大、(2)特定疾病、ひとり親家庭は現状維持、(3)市町村民税非課 税世帯、高額治療継続者(人工透析、統合失調症など)は全額助成を継続など、当初の案に比べて大きな改善がありました。
さらなる改善をもとめて
六月一日、諸団体とともに県に要請。鳥取民医連や医療生協、労働組合からも一五人が参加しまし た。その場でSW(ケースワーカー)が困難な患者のケースを出して訴えました。県の担当者は「(制度が)障害者の実態に合っているか検討中。個別の困難な 事例をどんどん寄せてください」と返答。SWらは他病院のSWにも協力を求め、八件を寄せてもらいました。合わせて一二件の困難事例を県に提出しました。
修正案のパブリックコメントにも多数応募。八月に出た見直しの最終案では、さらに若干の改善がありました。しかし、「障害児、障害者」の課税世帯の負担 導入、低所得者の入院時食事療養費の助成廃止は変わらず、現行制度に比べ負担増になります。九月議会に向けて新たな署名にとりくみ、県知事宛に二九四五 筆、県議会宛に四〇九八筆を提出しました。
患者さんと五〇件以上のパブリックコメントを出した診療所、九四歳の人の知事への嘆願書、署名を集めた小規模作業所のみなさん、他病院のSWたちの励ま しなど、大切なものと運動の広がりを得ました。この経験を秋の運動にも生かしていきたいと思います。(渡辺友範、鳥取民医連事務局)
(民医連新聞 第1412号 2007年9月17日)
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